こんにちは!栗原誠一郎です。
2018アジア競技大会開催地ジャカルタ
先日までアジア競技大会がインドネシアの首都ジャカルタで開催され、日本人選手の活躍が日々報道されていましたね。
4年に1度開催されるこのアジア競技大会はオリンピックのアジア版とも呼ばれ、2020年の東京オリンピックに向けて日本人選手は特に気合が入っていたようです。
多民族国家インドネシア
さて、インドネシアと言えば、皆さんは何を思い浮かべますか?日本人も大好きなリゾート地バリ島ですか?
もちろん、バリ島も有名ですが、インドネシアは世界最多の島諸島(その数なんと1万8,110島、日本も結構島が多い国ですが、その数は6,852島でしかありません。)を抱える国としても有名です。
東西5,100km、南北1,900kmという広い領域の中に、それらの島々が散らばっていることもあり、インドネシアは民族も非常に多様です。
その数は現時点で判明しているだけでも約300種族。世界第4位の2.55億人の人口の内、最大民族であるジャワ人でも約6,000万人、次に多い民族であるスンダ人も約2,700万人でしかありません。
各民族独自の言語は約250種類にもおよびますが、1945年に制定された憲法で国語をインドネシア語に統一したのです。
インドネシア語
このインドネシア語という言語は貿易で栄えてきたインドネシアで交易語として普及していた言葉です。
オランダ植民地時代の1928年、インドネシアの様々な種族の青年が参加した会議において、『青年の誓い』が宣言され、インドネシアが自分たちにとってひとつの祖国、ひとつの民族であることを確認し、インドネシア語を共通語とすると決議しました。
つまり、どこかの有力民族の言語をインドネシア全土に押し付けたわけではなく、多様性を尊重しつつ、西欧列強から独立できる国家としての力をつけるために、言語の統一を指向したのです。
多民族国家における国家運営の難しさ
ちなみに、1945年に制定された憲法と述べましたが、この1945年はインドネシアの初代大統領スカルノが、日本軍統治時代末期に約束されていた民族独立が、日本の降伏によって、元々インドネシアを植民地支配していたオランダに反故にされることを恐れ、一方的に独立を宣言したものでした。
国際法上正式に独立が承認されたのが1949年で、1950年に改めて憲法を制定、議会制民主主義を導入して国造りをはじめました。
しかし、多様な民族を実際にまとめるのは非常に困難で、各地で反乱が発生し、スカルノ大統領は、大統領の権限を強化し、国民の政治活動を制限しました。
その後、軍事クーデターによってスハルトが大統領になっても、大統領が絶大な権限をもつ体制は変わることなく、本当の意味で民主主義国家になったのは1999年からのハビビ政権以降ということになるでしょう。
しかし、各地で反乱が起きるような状況では、経済発展も難しくなりますから、国民自身も独裁を受け入れていたのではないでしょうか?
実際、世界銀行の定義によれば一人当たり国民総所得(GNI)が約1000米ドルに達すると中進国となりますが、インドネシアで一人当りGNIが$1,000を超えたのが1994年です。
スハルト政権の崩壊は1997年から始まったアジア通貨危機が引き金にはなっていますが、経済が発展し豊かになる中で、自由を求める気運も上がってきたのだと思います。
多様性の中の統一
長らく独裁政権の時代のあったインドネシアですが、1945年の憲法制定時から続いている国是があります。
それが「多様性の中の統一 Bhinneka Tunggal Ika」というスローガンです。
多民族国家において、国家的統一をもたらすために必要な考え方の原則を表したもので、時代により多少の言葉の違い、順序の違いはあるものの、以下の5つの考え方によって構成されています。
①唯一神への信仰
(無宗教はダメというだけで、イスラム教しか認めないということではない)
②公正で文化的な人道主義
③インドネシアの統一
④合議制と代議制における英知に導かれた民主主義
⑤全インドネシア国民に対する社会的公正
この「多様性の中の統一 Bhinneka Tunggal Ika」という言葉はインドネシアの国章の中にも明記されており、インドネシアにおいてこの考え方が大切にされていることが分かります。
独裁政権の時代はあったものの、あくまでも目指すところは1928年にインドネシアの様々な種族の青年が誓った『青年の誓い』にあるのですね。
アジア諸国は独裁色が強まっている国が多くなっていますが、インドネシアについては、今後、いくら政権が変わっても、この原則がある限り民主主義国家として発展していくのではないかと思います。
以上、外から見た、私のインドネシア観ですが、実際のインドネシアはどのような国なのでしょう?
皆さんはどう思いますか?
ということで、次回は、私が実際に現地に赴き、見て・聴いて・感じたインドネシアという国についてお話ししたいと思います。
お楽しみに。