新型コロナウイルスがまん延する中、テレワークが拡大しています。そのような状況でも企業は売上を獲得しなければなりません。
従来型の営業活動が制限される中、インサイドセールスと言われる、従来の営業手法を変革する手法が注目されています。
インサイドセールスとは何か?経営へのインパクト、成功事例、導入のポイントなどを紹介します。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、「内勤型営業」と言われる営業の一手法のことを指します。反対に対面型の営業のことをフィールドセールスと呼んだりします。
日本では、新型コロナウイルスがまん延し、顧客への訪問が出来なくなって注目されるようになりました。
一般的なインサイドセールスは、マーケティング部門などが開拓した新規見込み客に対して電話やメール、チャット、DMなどでアプローチし、契約確率を高めた後、フィールドセールスに引き渡す役割を担っています。
インサイドセールスは、そもそも1990年代から欧米で始まった営業手法です。
欧米のように広大な国土では、フィールドセールスは効率が悪いため、インサイドセールスが普及したと言われています。
また、日本のようにゼネラリストが重要視される雇用慣習ではなく、スペシャリストが重用されることも普及した理由だと言われています。
インサイドセールスの経営に対するインパクト
営業効率を高める効果
従来の営業は、多くの場合、顧客リスト作成からアポイントメント、訪問、クロージング、納品後のフォローまで一人の営業パーソンが行っていました。
そのため、営業パーソンによって成果にバラツキが大きく、効率も課題でした。それでも、世の中の景気が一方的に拡大する高度成長期には、市場のパイ自体が大きくなっていくため、営業効率はあまり議論されてきませんでしたが、低成長時代に入り、製品のライフサイクルも短くなっている現代、インサイドセールスによる、コストや営業資源の最適化が可能になってきています。
営業の属人化を防止
多くの企業では、「売れっ子」の営業パーソンがいることでしょう。その営業パーソンも自分の重要性を認識しているため、さらに売るための努力を続けている人も多いことでしょう。
そのこと自体は、企業にとって好ましいことなのですが、もしこのトップセールスパーソンが会社を辞めた場合、企業に対するダメージは大きなものになります。
多くの場合、トップセールスパーソンの売り方やノウハウは共有されていません。
つまり、特定の人しか出来ない売上の仕組みが出来上がってしまっているのです。
実は、企業にとっては大きなリスクです。営業パーソンの能力をブラックボックス化させないことが重要です。
業績の安定化
インサイドセールスでは、インターネット等を使って、営業状態が全社員によって可視化できます。そのため、売上の予測がしやすく、目標達成が困難な場合の対策も迅速にできます。
しかも、結果としての売上高だけでなく、営業のプロセスもリアルタイムで把握できるためフォローがしやすくなり、業績の安定化に寄与します。
インサイドセールスの事例「株式会社コドモン」
「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」というミッションを掲げ、幼稚園や保育園などの施設向けICTシステム「コドモン」の運営などを手掛ける株式会社コドモンで(東京都港区)では、他のシステム会社同様、従来型のフィールドセールスを行っていました。
しかし、「訪問しないと営業にならないといった考えは思い込みだ」と主張した同社執行役員の足立賢信氏が中心となり、2019年4月にオンライン営業に特化したチームを立ち上げました。
その結果、2021年3月の受注件数は、オンライン営業が52%を占めるなど、対面営業にひけをとらない結果を出しています。
ですが、見込み客もオンラインに慣れた顧客ばかりではないため、モニター越しの対面はぎこちなく戸惑いを感じる顧客もいました。そのため、商談の切り出し方に工夫を凝らしています。
また、「資料を見ながらお話しさせて下さい」と提案して、オンラインでの居心地の悪さを軽減したりもしています。
さらに、資料もスライド1枚につき1つのメッセージに絞り込んで分かりやすさを追求したり、録画機能を活用して社内の関係者で商談内容を精査したりして、営業ノウハウを共有したりしているようです。
【参考】日本経済新聞 「スタートアップに学ぶ働き方「ニューノーマル」」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58539550X20C20A4X11000/
インサイドセールスの対応ポイント
インサイドセールスは、これからの時代の営業手法として、有望なものですが、従来の営業手法とは大きく違うため、先ずはトップの理解が欠かせません。
特に、従来型のフィールドセールスで成長してきた企業ほど、実績のある従来手法から脱却したがりません。企業の生命線である営業部隊を納得させるには、先ずはトップの理解がスタートになるでしょう。
また、現在の売上を支えている手法を一気に変更するにはリスクもあります。段階的な導入の検討も必要でしょう。しかし、コロナ禍の体験した今こそ、導入検討の良いタイミングであると言えます。
次回は、インサイドセールスの具体的な導入ステップをご紹介します。
著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。