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【障害者雇用実践編】障害者業務切り出しのポイント(第2回/全5回)

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昨今はアウトソーシングやIT化の流れなどもあり、多くの企業は、どの部署も専門性の高い業務が多くなっています。

一般事務職が活躍するフィールドが狭まっているのも事実です。

しかし、未だ専門職が実施している業務の中には、一般事務職でも一定の期間習得することで切り出せる業務があります。

以下、障害者向け業務の切り出しに対する考え方、業務切り出しの具体的な切り出し方法やステップについてお伝えいたします。

 

業務の切り出しの考え方

冒頭にもお伝えしましたが、多くの組織内において、単純業務が少なくなってきているケースは増加しています。

特に大手企業では、グループ企業にアウトソーシング業務を集約する法人を設立し、グループ全体の業務簡素化に取り組んでいます。

結果、各企業はそれぞれ担当する業務分野に特化した専門性の高い業務部のみ存在し、一般事務職が活躍する業務が少なくなってきています。

多少ながら、一般事務業務が残っている企業でさえ、派遣社員を導入したり、パート・アルバイトの枠組みですでに業務が回っているのが実情です。

人事部が障害者雇用を推進したくとも、どの部署に問い合わせても、障害者に実施してもらう業務が無いと言われてしまいます。

新たに障害者を雇用する上で、最大のネックは「業務」という企業は少なくありません。

業務がないという企業において、最も重要なものは「考え方」と言えます。

固定概念を外す

障害者雇用を推進するにあたり、障害者に任せられる業務が無いという答えが多く出てきます。

これは「障害者」というイメージが人によってバラバラであることに起因します。

人事部の方々は、過去の採用時に何度も障害者と面接したり、実際に障害者と一緒に仕事をしているケースが多いのですが、その他事業部では一度も受け入れたことが無いなどの部署もあります。

そもそも新たに障害者を受け入れるという話には抵抗感もあるものですが、それ以前に障害者を個々人のイメージで考えてしまうということが多くあります。

人によっては「障害者=寝たきり」や「障害者=重度知的障害者」などのイメージを持っていたりします。

テレビで見たイメージをそのまま固定概念として持っている人もいるものです。

この固定概念を外すことが重要となります。

 

障害者の多くは、一定以上の業務は可能

障害者の多くはパソコンを使った一般事務職や簡単な作業系業務は問題なく遂行できます。

中にはワードやエクセル以外にもパワーポイントなども使いこなせる方も採用市場にはいらっしゃいます。

また昨今は精神障害者も増加しており、業務能力としては健常者の方々よりも深い知識や経験を持っている方もいらっしゃいます。

業務内容によって習得に時間がかかるケースもありますが、一度習得することで安定的に一定の業務量を実施することも可能となります。

 

一般的なコミュニケーションも可能

聴覚障害者、発達障害者、重度知的障害者以外の障害の場合、多くは一般的なコミュニケーションが可能です。

環境の配慮が一定以上担保できれば、多くの場合、健常者と変わりないコミュニケーションができます。

聴覚障害者も筆談やスカイプなどの手段を活用することで、手話を習得する必要もありません。

重度知的障害者はあまり採用市場には少なく、実際に採用するケースはレアケースとなりますが、発達障害者に関しても配慮する環境や体制を整備することで、専門的能力を発揮する方もいらっしゃいます。

 

障害者の業務選定方法

障害者が実施する業務を選定する方法は大きく分けて2つあります。

障害者が「専門能力を有する場合」と「一般事務レベルの場合」です。

 

障害者が専門能力を有する場合

応募してきた障害者が専門的能力、経験等がある場合です。

ハローワークからの応募の場合、レアケースとなりますが、人材紹介や専門求人サイトなどで採用する場合、一定の専門能力が見込まれます。

この場合、事業部でのその経験に見合う業務で就業が可能となります。

 

障害者が一般事務レベルの場合

多くの障害者はこちらのケースとなります。

今回は「一般事務レベルの場合」に焦点を当てます。

この「一般事務レベルの場合」、以下の3つの業務選定方法があります。

派遣社員、パート・アルバイトの業務

障害者雇用を推進する上で、既存の派遣社員が担当している業務やパート・アルバイトが実施している業務もターゲットの一つです。

派遣会社との契約満了予定やパート・アルバイトの方が退職するタイミングで障害者雇用を推進することも業務選定の一つとなります。

 

アウトソーシング業務の内製化

冒頭にも書きましたが、企業の多くの業務はアウトソーシング化されてきています。

しかし、中にはアウトソーシングすることで実際にはあまり費用対効果の薄いものもあるのが実際ではないでしょうか。

外部への費用負担を軽減しながら、障害者雇用を推進することが可能となるケースも存在します。

このアウトソーシングの内製化を実現するには多少ハードルは高いですが、仮に内製化を実現すれば、ボリュームのある障害者雇用が可能となります。

他社事例ですが、コールセンター業務を内製化で成功した事例や給与計算を内製化に実現できた事例などもあります。

作業系では清掃業務や社内食堂運営などの内製化という事例もあります。

 

ノンコア業務を集約する方法

各部署において専門性の高い業務のみで、一般業務が無いという回答を受けることが多いと思います。

しかし、実際には専門性の高い業務の中には「コア業務」と「ノンコア業務」があります。

つまり、知識とノウハウのある人ができない部分とそうでない部分があるのです。

具体的には専門性の高い「コア業務」とそれに付随する「入力業務」や「発送業務」、「社内報告向け業務」などです。

この「ノンコア業務」を集約し、または部署を横断することで一定量以上の業務が切り出すことができます。

それが「ノンコア業務を集約する方法」です。

 

業務切り出しステップ

「障害者の業務が無い」という企業において、調査的な意味合いも含めて、業務切り出しを取り急ぎ進めてみるという方法もあります。

 

業務洗い出しシートの作成

各部署や各部門の業務切り出しを実施する際、業務種類別に整理する「業務洗い出しシート」を作成します。

それぞれの部署、部門、担当者別に現在実施している業務を記載いただくシートです。

項目は「部署名」「担当者名」「業務名」「業務内容」「業務見込み時間」「業務発生頻度」などが挙げられます。

ピックアップする業務は、現在実施している業務全てを記載頂く方法と、障害者業務になり得る可能性のある業務を選択し、記載頂く方法があります。

【添付】業務洗い出しシート例

各部署や各部門への依頼

各部署や各部門へ依頼します。

その際、業務依頼の背景や障害者雇用推進する必要性などを伝え、業務切り出しの重要性を認識頂く必要性があります。

また、前項の如く、障害者イメージの固定概念を払拭する文言や説明も必要となります。

人事部担当者より説明会のような場を設定することも有効です。

尚、人事部より各部署への依頼する際の「社内向け業務切り出し依頼文」例を添付します。

【添付】社内向け業務切り出し依頼文例

業務洗い出しシートの回収及び優先順位付け

業務洗い出しシートを各部署から回収します。

業務ボリューム(月間業務量)や業務難度から鑑み、ある程度の優先順位を付けます。

 

業務対面ヒアリング

業務洗い出しシートや優先順位付けで見込み業務を選別し、改めて各部署へ、業務内容について対面ヒアリングを実施します。

見込み業務の担当者に時間を頂き、実施している業務の難易度や業務フローの詳細などを確認し、一定の習得期間があれば、一般事務補助程度でも実施できる内容かどうかを確認します。

 

業務選定

代表または担当役員等関係者と相談の上、難易度、月間業務時間数などを考慮し、業務選定を行います。

今後の採用障害者数の増加や業務替えの可能性なども考慮し、拡張できるような弾力的業務選定が良いかもしれません。

 

採用計画、業務フロー、マニュアル等の作成

実際、障害者採用も決まったのちに実施するプロセスです。

障害者の採用計画に合わせて、業務移行スケジュールも他部署と共有します。

今回、切り出しできた業務に関しては、障害者の業務としても有効ですが、高齢者の再雇用、女性の活用などを推進する際にも使えます。

そのためにも業務フローやマニュアルなどがあると長い視点で幅が広がっていきますので、障害者採用の際に作成しておくのも有効です。

 

次回【障害者雇用実践編】3回目は「障害者業務切り出し事例集」です。
実際に他社でどのような業務切り出しに成功しているのか、部署別や業種別で具体的にご案内いたします。

筆者:嵐 正樹
■プロフィール:
障害者雇用サポート支援として、身体・知的・精神障害者全ての雇用サポート実務を経験。
障害者雇用コンサルタントとして、東証一部上場企業を含めた10社以上の障害者雇用体制立ち上げを経験。
業務切り出しから採用、定着までの一貫した雇用サポートに強み

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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