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国際貢献の「技能実習」と雇用拡大の「特定技能」、2つの在留資格の違いとは

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外国人に日本の技術を伝える技能実習制度。80を超える職種で、これまでに多くの外国人労働者の受け皿となり利用されてきました。

そして2019年4月に新たに「特定技能」が創設され、飲食業や宿泊業の分野まで就労対象が拡大されるなど、外国人雇用の機会・需要ともに高まりつつあります。

「技能実習」と「特定技能」は外国人の就労を広い範囲で許可するという点で似ていますが、制度としては根本的に異なります。

今回は、間違えやすい「技能実習」と「特定技能」の二つの在留資格について、その違いをご説明します。

「国際貢献」の技能実習、「雇用拡大」の特定技能

技能実習と特定技能の在留資格の大きな違いは、そもそもの「目的」です。

技能実習とは、途上国をはじめとした諸外国から人材を受け入れ、日本の技術を習得させたあと母国へと持ち帰ってもらう、国際貢献を基軸にした制度です。

対して、特定技能の在留資格は、特定の分野で即戦力として働ける人材を対象としています。外国人の雇用拡大、ひいては国内産業の人手不足解消を目的としています。

  • 技能実習制度:国際貢献が目的。途上国へ技能移転のためにつくられた制度。「非専門的・技術的分野」が就労の対象になる。
  • 特定技能:即戦力の人材を対象としており、技能を持った外国人の雇用拡大と市場の人手不足解消を目的とする。「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動」が対象。

外国人雇用を検討する企業・団体の経営者は、「単純労働だから」という趣旨だけで在留資格を選択せず、二つの制度の違いを理解しておく必要があります。

技能実習と特定技能の異なる3つのポイント

技能実習と特定技能の制度の違いを、下記の表をもとに説明します。

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異なるポイント1.仲介業者の存在の有無

技能実習制度は、「監理団体」と呼ばれる仲介業者が、海外からやってくる技能実習生をとりまとめ、企業・団体に派遣する方式が全体の9割を占めます。

技能実習生の渡航や就労する企業・団体の監理は、相手国の送り出し機関と、日本国内の監理団体の主導により行われるのが一般的です。

技能実習は「国際貢献」という性質上、受け入れ直後に一定期間の研修を実施しなければなりません。

監理団体によっては、受け入れ企業に代わりこうした研修を代行するところもあります。

一方、特定技能に特定の仲介業者は存在しません。原則として、外国人と企業の直接雇用が採用されます

また、企業が海外から直接、人材を呼び寄せることも可能です。

監理団体に似た性質の役割に、登録支援機関があります。これは、外国人の受け入れ機関である企業・団体が、外国人に対して実施するべき支援を、業務委託を受け代行できる企業・団体のことを差します。

企業が実施するべき支援の内容は、空港送迎、生活支援、語学サポートなど多岐にわたります。

受け入れ機関の負担を軽減し、特定技能外国人の円滑な就労をサポートする役割を担うのが登録支援機関です。登録支援機関は届け出制であり、認可された企業・団体のみが活動を許可されます。

異なるポイント2、特定技能は転職が可能

技能実習制度では、実習生の転職は原則不可です。例外として、技能実習2号から3号への移行時だけ、転籍が認められるケースがあります。

対して、特定技能の場合、同一の分野・技能が要求される職種であれば転職が可能です。

特定技能を利用して外国人を雇用した際は、当該人材が転職して職場を去る可能性に留意しましょう。

また特定技能は、在留資格を申請する際、定められた技能評価試験と日本語能力試験の2つに合格していなければいけません。

技能評価試験については、分野別に定められています。雇用決定時に、試験をパスする能力を有しているのか確認してください。

なお、試験の合格は在留資格申請時が必須であり、内定出しの段階で合格の有無は問われません。

異なるポイント3、滞在期間の制限の有無

技能実習は、1号は1年以内、2号は2年以内、3号は2年以内で通算5年が滞在の上限です。

5年の上限を迎えた技能実習生は、ほかの在留資格を取得しない限り、本国へ戻らなければなりません。

特定技能は、1号と2号に分けられており、1号が通算5年を上限としますが、2号に期限の定めはありません

ただし、2号を取得できる分野は、2020年時点で「建設」「造船・船用工業」の2種のみであり、現実的にはほとんどの特定技能外国人は、5年の上限のもと雇用されます。

技能実習と特定技能の関連性。技能実習2号から特定技能への移行

特定技能と技能実習の間では、特例が設けられています。

技能実習2号を修了した外国人は、関連する職種の特定技能1号へ、技能評価試験免除で移行することができます。

これにより、技能実習で滞在していた外国人の在留期限が伸びることに。また、受け入れ企業としても、業務に慣れ仕事に精通した人材を、長く雇用できるメリットがあります。

まとめ

技能実習の在留資格は、「研修」や「育成」という意味合いが強くあります。

監理団体のような仲介業者も存在するため、一般的な外国人採用とは異なる点を理解しておきましょう。

一方、特定技能は人材を直接雇用でき、人手不足解消のために即戦力を雇用できる在留資格です。

ただし、受け入れ機関は適切な支援を計画し実施する義務を負います。

2つの性質の違いや、対象となる職種・滞在期限等を確認したうえで、自社にとってどちらの選択肢がよいのか見当することが大切です。

著者:佐伯文弘

ビザや会社設立など外国人への法律サービスを数多く手がける国際行政書士.司法書士。ニーズが増え続ける外国人雇用の分野でのビザ申請、会社設立では登記から経営管理ビザまでワンストップでの処理が可能、その他許認可申請など外国人がからむビジネスでは頼りになる専門家。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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