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育児・介護休業法の改正によって何が変わる?

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男性の育児休業取得率は女性に比べるとかなり低く、令和元年度は7.48%の取得率でした。育児休業を取得したくても、実際は取得しにくいと思っている男性が多いようです。

しかし、育児・介護休業法の改正法案が可決されたことにより、今後男性の育児休業が大いに変わってくると考えられます。

今回は、育児・介護休業法の改正によって、男性の育児休業制度がどのように変わるか解説いたします。男性が育休を取りやすい環境づくりを早めにスタートしておきましょう。

育休を取りたい男性は少なくない

婚活支援サービスを展開する株式会社パートナーエージェントの調査によると、将来子どもがほしい20〜40代独身男性の78.1%が「育休をとりたい」と回答したそうです。

しかし、育休についての考えとして、実際に取得するかは「周囲の取得状況に合わせて考えたい」が63.3%、「取りづらい雰囲気があれば育休は諦めると思う」が55.1%となっています。

育休を取得して、我が子の育児に積極的に関わりたいと考える男性は約8割もいるのですが、自分の希望よりも職場の雰囲気で判断しようと考えている人が多いようです。

【参考】パートナーエージェント QOM総研「78.1%が「育休取りたい」将来子どもがほしい20~40代独身男性」

https://www.p-a.jp/research/report_130.html

この調査の結果から、育休を取りたくても、自分の希望が通らない可能性があると考えている男性が多いことがわかります。

育休を申し出た場合、企業は拒むことができないのですが、他の男性社員が取得していない職場や、男性社員は育休を取りにくい雰囲気の職場であれば、諦めるしかないと思っている人が多いようです。

しかし、近年は男性の育休取得を推進する企業が増え、このたび育児・介護休業法の改正法案も可決されました。

もっと育児に参加したいのに男性であるため育休を取得しにくい…そのような状況は今後変わっていくでしょう。

男性の育休制度が変わる!育児・介護休業法の改正内容とは

2021年6月3日、育児・介護休業法の改正法が衆議院本会議で成立しました。この改正法では、男性が育休を取りやすくなるための新たな制度の新設や制度の変更がおこなわれ、令和4年4月以降順次導入されます。

出生直後に取りやすく、分割取得も可能

今回の改正では、出生後8週間以内の時期に男性の育児休業が取りやすくなる「出生児育休」が導入されています。

現行の育児休業制度では、育児休業の取得可能期間は原則として子が1歳まで(やむをえない場合は2歳)でした。

しかし、新制度では、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能であり、2回に分割することも可能です。

このことにより、たとえば出生児や退院時に1回目を取得し、妻が里帰りから戻る時期に合わせて2回目を取得することもできます。

長期間の休みを取ることが難しい男性でも、2回に分割できることで柔軟に育児休業を取得できるでしょう。

育休の申し出期限は原則1ヵ月前まででしたが、新制度では休業の2週間前までに短縮されたため、より取得しやすくなりました。

また、現行の育児休業制度では育休取得中の就業が原則不可でしたが、新制度では労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中の就労も可能になります。

出生児育休は「男性版産休」とも呼ばれ、男性の育児参加を促すとともに、女性の「産後うつ」のリスクを軽減すると考えられています。

個別に周知・意向確認の義務化

今回の改正法案では、本人・配偶者が妊娠や出産の申し出をした場合、事業主は労働者に対して育児休業の制度を個別に周知したり、取得の意向確認をしたりすることが義務化されました。

これまで男性が育児休業を取得したくても、なかなか言い出しにくい職場が多かったことでしょう。

育児休業や時短勤務を希望することで、実際にパタハラ(パタニティ・ハラスメント)にあった男性も少なくないようです。

「男性が育児休業を取るなんて」と言われることもあったでしょうが、近年は共働きの家庭が多く、男性が積極的に育児に参加することは珍しくありません。

また、たとえ妻が専業主婦であっても、女性は出産後にホルモンバランスの乱れによって精神的に不安定になります。実家が遠くて里帰り出産ができない人もいるでしょう。

孤独な育児を解消するために、夫が育休を取得して夫婦で協力して育児をおこなうことは重要なことです。

施行後は企業が育休取得対象の男性に対して制度について説明し、取得の意向確認をおこなうことが義務付けられます。

これにより、「育休を取得したい」と言い出せずに取得を諦めることがなくなるでしょう。

自分から申し出なくても企業側から育休を取得するか聞いてもらえるので、取得しやすくなります。この義務化については令和4年4月1日に施行されます。

分割して取得可能

これまでは育児休業を分割して取得することはできませんでしたが、改正後は分割して2回まで取得可能になりました。

これにより、出生後8週間以内に4週間取得できる「出生後育休」と合わせて、男性は合計4回まで取得可能になります。

分割して取得できることで繁忙期などを避けられるため、男性も育休を取得しやすくなるでしょう。

また、保育園に入所できないなどの理由で1歳以降に延長する場合でも、育休開始日が柔軟化されるため、妻と途中交代で育休の取得が可能です。

有期雇用労働者の取得要件が緩和

これまで契約社員やパート・アルバイトなど、有期雇用労働者が育休を取得するためには、下記の条件がありました。

  • 同じ会社に雇用された期間が1年以上続いている
  • 子が1歳6ヶ月に達する日までに雇用期間が満了にならない。また、契約を更新する場合は、更新されないことが明らかではないこと。

しかし、改正後は1年以上の雇用という要件が撤廃され、1年未満の労働者でも育休の取得が可能になります。

ただし、労使協定の締結により除外にすることも可能です。こちらは令和4年4月1日に施行されます。

育児休業取得状況の公表が義務化される

従業員数が1,000人を超える大企業については、育児休業等の取得状況を毎年公表することが義務付けられます。こちらは令和5年4月1日に施行されます。

まとめ

従来から男性も育休を取得できたのですが、取得したいと言い出せるような雰囲気ではない会社もあるでしょう。

また、長期間休んで周りに迷惑をかけたくないなどの気持ちから、取得を諦めてしまう男性従業員も多いようです。

今回の法改正は休みを分割して取れるようになりましたので、長期間休むことが難しい人や、スケジュールに合わせて育休を取得したい人にとっては、ずいぶん取得しやすくなりました。

子どもが生まれたら育休を取得したいと考える若い男性も多いため、育休が取りやすい企業は就活を控えた学生にも魅力があります。

男性も女性も働きやすい職場づくりを推進することで、従業員の愛社精神が高まり離職率が下がることや、よりよい人材が集まる可能性があるでしょう。

男女に関係なく、子どもを持つ従業員が仕事と育児を両立できるように、職場の環境を整備していく必要があります。

育児・介護休業法の改正内容として5つのポイントをご紹介しましたが、その中でもまずは「育休の個別周知と意向確認の義務化」「有期雇用労働者の取得要件が緩和」の2つが令和4年4月に施行されます。

その他も順次施行されますので、直前になって慌てなくていいように、社内環境の整備や対応について早めに取り組んでいきましょう。

著者:早瀬 加奈子

会社員時代は、楽器小売業の会社で10年以上経理に携わっていました。
現在は専業のWEBライターとして活動しています。
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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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