販促ツール内製化のメリットの1つは「印刷料金の削減」です。
しかし、印刷料金はコンピュータ化により安価になってきました。
DTPデザイン、製版業務、印刷機械の進化が大きな要因です。
ネット印刷は顕著です。ケースによっては印刷外注費のほとんどを占める印刷営業マンの営業費とデザイン料金が必要ありません。
ネット印刷の高品質・低価格の秘密と、プリンターによる印刷経費を具体的に見ながら販促ツールを内製化する目的を再確認してみましょう。
印刷方法の選択
地元の印刷会社に外注すると、担当営業マンが訪問して打ち合わせを行い、原稿となる資料を持ち帰りデザインデータを作り校正確認後、印刷物の納品を行います。営業経費とDTPデザイン料金が発生します。
さらに、オフセット印刷をするための「刷版(4色カラー印刷なら4枚)」の制作料金や材料費、さらに高額な設備投資と減価償却を伴う印刷機械を回して印刷し、仕上げの断裁を行って製品は完成します。
地元印刷会社は、基本的には1件ごとの個別の対応となります。
しかし、ネット印刷はデザイン料が発生しないデータ入稿であること、複数の印刷物を同時に印刷するビジネスモデルである点が大きく違います。
少部数のカラー印刷物で採用されるオンデマンド印刷、高品質プリンターで出力する場合もありますが、複数同時印刷である点はオフセット印刷と同じです。
地元の印刷会社に発注するのは、デザイン性が高く専門的アドバイスを必要とする印刷物と考えることができます。
低価格で高品質のネット印刷
ネット印刷の低価格で高品質の印刷物が仕上がる工程を具体的に紹介します。
前述のとおり、基本的にはデータ入稿ですからデザイン料金や営業費が必要ありません。
加えて、一般的に語られる事は少ないのですが、印刷方法が大きく影響しています。キーワードは「データ入稿」と「同時複数印刷」です。具体的に紹介していきましょう。
A4×両面カラー印刷をネット印刷で1000部印刷する場合
ネット印刷はデータ入力が基本なので、デザイン料や営業費は発生しません。
印刷は、受注を希望する全国の印刷会社が担います。
この時、4件まとめて受注して印刷するとします。
納期が長くなると印刷料金が下がるしくみは、一度に複数の注文分を同時に印刷する調整がしやすくなるためです。
オフセット印刷の場合、「A4」の大きさの紙にカラー印刷をすることはありません。4件(8件もあり)まとめて「A2」の用紙で、しかも両面同時に印刷します。
1回印刷機を通れば、4件分の印刷物が出来上がります。1件だけ500部の注文なら残りの500部は廃棄処分します。印刷用紙の廃棄分はカバー(単価2円:1000円程度のロス)できます。
全国から複数の注文を同時に受けることができれば、印刷料金が安くても利益が出ます。
ただし、大型印刷機を備え実績を持つ中堅印刷会社であることが前提となります。場合によってはオンデマンド印刷機も必要です。
つまり、ネット印刷は「安かろう、悪かろう」ではなく、「低価格で高品質」を前提として利用を考えることができます。
低価格であるため受注件数が少ないと利益確保が難しくなりますが、受注件数の拡大で利益が膨らみます。
地方都市の企業が地元の小規模印刷会社にカラー印刷をすれば、1000部(通常はオンデマンド印刷で処理)ずつ印刷する方法が一般的なので、ネット印刷料金の数倍以上の見積もり金額になります。
購入経費と使い放題サービスの定額プリンターリースインク
販促ツール内製化の基本は、自社プリンターで印刷することで「印刷経費の削減」「時間短縮と営業経費の削減」です。
納期に余裕があれば、ネット印刷で1週間以上の納期設定をすることで最安値の印刷も実現します。
プロジェクトの準備から実施までの時間短縮の必要があり、自社プリンターで営業チラシや名刺を印刷することが販促ツール内製化を採用する一般的な考え方です。
ここで考えなければならないのが、インクカートリッジなど消耗品の価格です。
通常、安価なプリンターだとA4カラー印刷を片面3~500枚印刷すると交換が必要です。詰め替えインクもありますが、作業が大変です。
毎月制作するチラシが両面カラー印刷500枚程度であれば、時間に余裕を持って作業を進めるとネット印刷の方が安く、しかも高品質の印刷物に仕上げることができます。
そこで、プリント枚数に関係なく1万円前後の固定費でプリンターリースを行うサービスが登場しています。
営業チラシやカラーの資料を毎月1000枚以上プリントアウトしても、インク交換経費を考える必要がありません。
経費削減の選択肢として、定額リースサービスを考えるという選択肢もあります。
プリンター導入によるコストパフォーマンス
社内秘の会議資料作成など頻繁に、しかも大量に印刷物を用意する企業であれば会社に複合機を導入することもあります。
細いラインやカラー再現力も向上したことから、設計事務所やデザイン事務所などカラープリンターの利用範囲は拡大しています。
常時、プリンターを利用して営業チラシやメニューなどの販促ツールを制作する企業や専門店は自社プリンターがあれば便利ですね。
最近はカラー再現力が高く、A2サイズの大型ポスター印刷もできるプリンターも家電店に並んでいます。
飲食店や専門店、ショーウインドウの大型ガラス面を通して通行する車などに新商品入荷などをリアルタイムでアピールしたり、Web情報と連動させることもできます。
今後、販促ツールは自社プリント、定額プリンターリースの利用、ネット印刷、さらに印刷物によっては地元の印刷会社に発注するなど、印刷物によってコストパフォーマンスを見極めながら使い分ける動きが拡大すると見られます。
まとめ・・・コスト計算による取捨選択モデルの構築
販促ツール内製化のメリットのうち「経費削減」について印刷方法を参考に紹介しましたが、印刷経費削減については必ずしも自社のプリンターが有利だとは言えないことがわかりました。
交換インクの経費やネット印刷を同時に考えれば、「時間との関連」や「情報編集力の向上」にも注目する必要があります。
ただし、リアルタイムの対応による情報発信で成果が得られるビジネスチャンスは多いものです。
たとえば中堅スーパーなどでは特定の商品のメリットがテレビで放映されると、翌日の店頭POPで告知すれば売り切れ状態になることも珍しくありません。
自宅でテレビを観ながらパソコンでPOPデータを作っておけば、翌朝、社内プリンターで印刷して店頭商品棚に設置しておくだけでいいのです。
販促ツール内製化は、単に営業チラシやPOPを編集する作業ではなく、販売戦略とともにコスト管理、さらに営業成果や組織と連動した実践計画まで含めて考える必要があるでしょう。
著者:小林マサヤ
専門はWord・PowerPoint DTPとWebコンテンツ情報の編集。マスメディア広告の「消費喚起」に対し、「自己投資意欲」から「自己決定」へ誘導するコンテンツ&コミュニティマーケティングを提唱。企画力につながるビジネスマンの情報編集力、組織運営力を含むビジネス編集力の強化を提唱している。