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中堅中小企業の人事イノベーション事例を紹介

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人事イノベーションとは、人事制度について新たな考え方や技術を取り入れることによって、業務効率化や人材不足の解消→売上の増加という好循環を作る仕組みです。

この記事では、中堅中小企業の職場環境に影響を与える法改正の内容とそれに対応した中堅中小企業の人事制度上のイノベーションを紹介します。

中堅中小企業を取り巻く法制度の変更

2018年7月に労働法を改正した働き方改革関連法案が成立しました。

長時間労働や正規と非正規の労働条件の差別といった社会問題に対処するために作られたこの法案は、中堅中小企業の人事制度に大きな影響を及ぼすと想定されます。

法制度や長時間労働を嫌悪する社会の反応に柔軟に対応して、人事制度のイノベーションを実現することが求められています。

時間外労働の上限規制

日本は欧米先進諸国と比べて、長時間労働が深刻であり、過労による自殺が社会問題となっています。

2013年には国連委員会が長時間労働の是正を日本政府に勧告しています。

労働者の過労を阻止するために、時間外労働が月45時間、年360時間に制限されました。

臨時的な特別な事情がある場合には三六協定の締結によって、時間外労働が可能になりますが、その場合でも月100時間未満、年720時間以内、複数付きの平均残業時間80時間に制限が設定されます。

なお上限を超過した場合には刑事罰の対象になります。

年次有給休暇の時季指定

労働基準法の改正によって、週5日のフルタイムの労働者など10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、使用社が労働者に時季を指定して取得させる義務があります。

時季指定の際には労働者の希望に沿うように意見を聴取する義務や時季指定となる労働者の対象や時季指定の方法を就業規則に記載する義務があります。

時季指定の義務を遂行しなかった場合には刑事処罰の対象となります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、業務内容が同じである限り、正規雇用とパートタイムや派遣などの非正規雇用とに関わりなく、同一の賃金を支給するという原則です。

以前から問題となっている正規雇用と非正規雇用との間の労働条件の非合理的な差別をなくすことを目的としています。

経済格差をなくすことで働く人のモチベーションを向上させ、自分にあった多種多少な働き方を選択できる社会を目指します。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度とは、個人のニーズを考慮した新しい勤務形態のことで、従来の9時から5時までの勤務形態以外の勤務形態を指します。

日本では、1ヶ月以内の総労働時間を設定し、総労働時間内で労働者が始業時間や就業時間を決めることができる働き方と理解されています。

従来、最大1ヶ月しか認められなかった制度ですが、3ヶ月まで利用できるようになりました。

繁忙期では、3ヶ月のなかで休暇を調整できるので、雇用者側にとってもメリットがあります。

中堅中小企業の人事イノベーション事例

働き方改革関連法案が成立したことによって、中堅中小企業を取り巻く経営環境が大きく変化しました。

多くの中堅中小企業が法改正に対応するために人事制度の見直しを迫られています。

しかし、中堅中小企業の中には法改正をチャンスと捉えて人事制度を変更することで生産性の向上や業務効率化に成功している企業もあります。

株式会社シティネット

株式会社シティネットはサーバ構築やソフトウェア開発、ネットワーク構築などを手掛ける高知県のIT企業です。

同社は社員数7名の小規模な企業ですが、社員のプライベートな時間を確保するために労務管理の見直しを実施しました。

具体的にはボーナスの支給時に有給休暇の取得日数×2,000円の金額、または過去6ヶ月の残業時間が10時間以下の場合には25,000円を上乗せする賃金規定を作りました。

これによって慢性的な残業が改善され、月の残業時間は半分以下になりました。
結果として利益率も向上し、社員の働き方改善と両立しました。

馬野建設株式会社

馬野建設株式会社は1948年創業の総合建設会社であり、鳥取県優良建設工事施工者表彰を受賞するなど地元では有名な企業です。

しかし、地方の過疎化によって、若年層の採用難に悩まされており、それによって社員の残業時間が増加、負担のかかった社員が退職するという悪循環に陥っていました。

同社は残業計画表の提出を義務化することで計画的に業務を平準化することを目的として、残業が60時間を超える場合には追加人員を投入しました。これによって、月平均28.6時間だった残業時間が14.1時間に短縮されました。

タルボットジャパン株式会社

婦人服ブランド「タルボット(TALBOTS)」を運営するタルボットジャパンは従業員の大半が女性でした。

また、従業員の平均年齢は50歳前後であり、家族の介護と仕事の両立が課題になっていました。

そこで各店舗で1ヶ月を単位とする変形労働時間制の導入で勤務時間にメリハリをつけました。

具体的には忙しい日は労働時間を長く設定する一方でそれ以外の日は短く設定しました。

変形労働時間制の導入によって、月の平均残業時間は前年から約20%減少し、働きやすい職場になりました。

株式会社一ノ蔵

株式会社一ノ蔵は宮城で地元の伝統的な地酒を醸造しています。地元の伝統を担う同社では若年層の採用と育成が課題でした。

働きやすい職場づくりのために、「5時に退社すること」を徹底させ、さらにジョブローテーションを導入することで社員のスキルアップを目指しました。

これらの取組によって社員の月の残業時間は平均で1.4時間にまで抑制されました。

また、年次有給休暇の取得率も60%に上昇し、働きやすい職場として県に表彰されています。

まとめ

この記事では、中堅中小企業の職場環境に影響を与える法改正の内容と、それに対応した中堅中小企業の人事制度上のイノベーションを紹介しました。

中堅中小企業では、働き方改革法への対応や少子高齢化による採用難などによって人事制度の見直しを迫られています。

人事イノベーションを実現することで、人材不足の解消→売上の向上→従業員への還元という循環を作ることができます。

著者:篠田啓介
都内の大学卒業後、都市銀行に入行。中堅中小企業のお客様向けに融資や保険、M&Aを含む事業承継などの提案営業に従事。その後、上場企業などの大企業営業、本部の広報部や人事部も経験。メインとなる法人営業では、赤字企業向けに経営計画や資金繰り表の作成サポート業務にも従事。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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