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帝国の衰亡

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こんにちは!栗原誠一郎です。

歴史は繰り返す

それまで「リベラリズム」のイデオロギーに胸を張って、自らそれへの信奉を公言してきた知識人・政治家にとって、たんなる「状況」の変化によって、その旗印を下すことは、とりわけ自らの知的信頼性と一貫性の問題に関わるため、道義的にもすこぶる苦渋に満ちた選択となる。そこで、さまざまなレトリックや中間的な「理論」が発明され、自らの保護主義への傾斜が、何か新しい、そして結果としてより“開放性”を高めるための新路線であるかのように訴える議論が広まっていった。

 

そうした意図で生まれたスローガンとして「公正貿易」という言葉や「相互主義」という用語がその代表的なものとして人々の口にのぼった

これは、1997年に出版された中西輝政氏の「大英帝国衰亡史」の一節です。

つまり、1800年代の終わりにかけてのイギリスについて解説しています。

今、アメリカが正に「公正貿易」というレトリックを用いて、中国をはじめとする国々に「制裁」(これも当時のイギリスで用いられた上記スローガンの一つ)を行おうとしています。

正に歴史は繰り返すということを感じるとともに、19世紀から20世紀にかけて衰亡していった大英帝国と同じように、今、アメリカも衰亡しつつあることを意識せざるをえません。

 

工業生産力が国力の源泉

そもそも、大英帝国はなぜ衰亡したのでしょうか?

第一次世界大戦にともなう戦費支出、エリート層の戦死による人財力の低下など様々な要因が挙げられていますが、やはり工業生産力の低下が帝国衰亡のベースになったと言えるでしょう。

イギリスは産業革命により工業生産力を高め、1860年から80年にかけて世界の工業生産高の2割強を占める工業生産力1位の国でした。しかし、工業生産力を高めてきたアメリカ、ドイツに追い越されて行きます。第一次世界大戦(1914~1918) がはじまる直前の1913年にはアメリカに2倍以上の差をつけられています。

したがって、第一次世界大戦は大英帝国の衰亡を決定的にしたかもしれませんが、すでに大戦前から衰亡の歴史は始まっていたのです。

 

アメリカ vs 中国

さて、今の世界の状況はどうでしょうか?

国際連合工業開発機関(UNIDO)の調査によれば、実質MVA(製造業付加価値額)は2010年の段階でアメリカが中国に抜かれ(アメリカ1,830B$、中国1,920B$)、2015年においてはアメリカが1,954B$、中国は2,818B$と大きな差をつけられています。

勿論、例えば航空・宇宙産業の付加価値額ではアメリカが圧倒的1位の座を守っています。

何を生産できるかということも大切ですが、長期的な国力の差は、この実質MVA総額の差のとおりになっていくでしょう。圧倒的な軍事力もお金がなければ維持強化はできません。

昨今のニュースではトランプ大統領の言動だけがクローズアップされがちですが、このトランプ大統領を選んだのは多くのアメリカの人々です。つまり、多くのアメリカ人が自国の衰亡を感じとりながらも、かつての大英帝国と同じように現実を直視できずにいるのだと思います。

 

結局は技術力・労働力の質を高めるしかない

いくら中国が不公正だと非難し、制裁を発動しても、状況は変わりません。

中国は人口が圧倒的に多いので、この中国の工業生産力に対抗していこうとすれば、技術力を高めること、そして根本的には労働力の質を高めることによって生産性を上げるしかないのです。

アメリカが中国や他の国々を批判するのではなく、自国の現状に向き合い、改革を進めることができるのか?それが今後の世界の流れを決めるといってよいでしょう。

国力の問題としては、日本も同じですよね。

少子高齢化で人手不足になっている今こそ、技術力・労働力の質を高め生産性を上げていかなければ、世界の中で存在感のない国になっていくことでしょう。

 

さて、皆さんはどう思いますか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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