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中堅中小企業の人的資本経営実践事例

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従業員のリスキルで成果をあげている事例

企業の紹介

企業名:株式会社ワン・ステップ
事業内容:イベント遊具企画・レンタル・販売
イベント向け工作キット企画開発・卸販売
防災・減災・感染症対策・医療関連機器の開発・販売・レンタル
資本金:1,000万円
HP:https://onestep-miyazaki.com/

事業の概要

2000年創業の株式会社ワン・ステップは、中古車販売業や福祉用具の修理・販売業、駄菓子・玩具卸売業などを経て、現在はビニール製のエアー遊具を中心にイベント事業、工作キットなどの企画開発・販売を手掛けています。

本社のある宮崎市のほかに、浜松市、姫路市に支店を持ち、15年には中国四川省に現地法人を立ち上げています。

「はばたく中小企業・小規模事業者300社」(経済産業省)や「 J-Startup KYUSHU 33社」(九州経済産業局)に選定されるなど、先進的な事業運営していることが特徴です。

リスキル活動に取り組むきっかけ

山元洋幸社長は、学生時代に宮崎市中心市街地活性化事業に申込み、創業した経緯から、会社経営のノウハウは商工会議所や中小企業大学を通じて習得してきました。

その過程で出会う経営者との学びの有益さが企業成長につながることに気付き、従業員のリスキル活動を始めました。

リスキル活動の具体的内容

(1)3~5年後の従業員の姿を想定して研修テーマを設定
山元社長自らが従業員と面談し、各従業員の3~5年後を見据えた研修テーマを決めています。

(2) 年1回以上の社外研修は公的機関の研修を活用
商工会議所や中小企業大学校を中心に社外研修を実施。コロナ過では中小企業大学校のオンライン研修「WEBee Campus」を活用して、「時間と場所にとらわれない働き方」に対応しています。

(3) 毎月40分程度の独自の社内研修制度
社内研修は、従業員が選定した中長期的に仕事に関する書籍を各自が読み、ディスカッションすることで仕事に関する知識の定着とコミュニケーション能力向上を促しています。

(4)学ぶことが組織風土として定着
こうしたリスキル活動を開始してから10年が経過し、一人ひとりの従業員が現状と目標のギャップをどうしたら埋められるか考えるようになったとのことです。

(5)リスキル活動から新規事業が生まれる
メイン事業であるエアー玩具に関連したエアー式簡易陰圧室づくりという新規事業が、26歳の若手従業員を中心に生まれました。今ではコロナ過の売上落込みをカバーするまで成長しています。

(6)「会社の役目は従業員に学ぶ機会を提供すること」
山元社長は、
・従業員に学ぶ機会を提供するのが会社の役目
・この会社に入って良かったと思ってもらえるよう、従業員とともに学び、成長していきたい
と語っています。

(7)研修費用500万円以上
社員数30名の研修費用は年間500万~600万円程度とのことです。

事例から学べる事

ここで学べる事は、書籍のテーマを「中長期的に」仕事に関係することに絞っていることです。

従業員ごとに設定される研修テーマが「3~5年後の従業員の姿」想定したものであることに沿い、個人のキャリア形成を業界の将来像と方向性を合せ、積極的な就業姿勢を促すことを目指しているものといえます。

また、「この会社に入って良かったと思ってもらえるよう、従業員とともに学び、成長していきたい。」と社長が思いながら、リスキル活動を実施し、従業員の発案を活かして新事業を展開するなどインクルージョンを実現しています。

こうして「従業員エンゲージメント」を高め、幸福度の上がった仕事の効果で、1.3倍の生産性、1.37倍の売上、3倍のイノベーションが期待できるようになっています。

出典:2022年中小企業白書事例2-2-3
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_2_2.html

従業員エンゲージメントを高め業務の質を向上させている事例

企業の紹介

企業名:株式会社ホクシンエレクトロニクス
事業内容:情報通信機械器具製造業
資本金:2,600万円
HP:http://www.hokushin-elec.co.jp/

事業の概要

株式会社ホクシンエレクトロニクスは、電気電子部品製造業として1991年秋田県秋田市で創業しました。
99年には自社製品開発と新規分野開拓のため開発部門設立。

03年には現在の主要事業である半導体の製造を開始し、06年にはもう一つの事業の柱である医療機器分野の開発をスタートさせました。

自社の研究室を設け、国際的な品質マネジメントシステム規格ISO9001を取得し、環境省「エコアクション21」に認証されるなど、環境に配慮した高品質なモノづくりをしています。

エンゲージメント活動に取り組むきっかけ

現社長がコロナ過で出会った「幸せ」をテーマとするドキュメンタリー映画を観て、従業員の幸福度向上に興味を持ちました。

時を同じくして実施されていた商工中金の「幸せデザインサーベイ」にて、幸福度向上と生産性・創造性向上の相関性をあることを知り、エンゲージメント活動に取り組むことを決めました。

エンゲージメント活動の具体的内容

(1)モラルサーベイ実施
所要時間15分で答えられるチームパフォーマンスや身体、マインドなど5項目についての設問調査を全従業員に対してオンライン上で実施。

結果は全体平均値56点を下回る53.8点であったものの、平均値に近かったことと、会社の将来を考えている従業員の存在に気づき、改善施策の展開を決定しました。

(2)課題判明
調査を通じて判明した課題は
・褒めることが浸透していない
・評価基準が見えず達成感を感じられない
というものでした。

(3)改善活動
①調査結果と企業の方向性を全社員と共有

社長が全従業員に対して調査結果を発表すると共に「幸せに楽しく働ける会社」を目指したいと表明、同時に改善提案を従業員に募集しました。

その結果、従業員から改善提案が続々届き始め、改善活動が始まりました。

②サンクスカード導入

「褒めることが浸透していない」との調査結果に基づき、名刺サイズのカードに日頃の感謝を込めたメッセージを書き込み、贈り合う活動を開始。

③人事評価制度刷新

「評価基準が見えず達成感を感じられない」との調査結果に基づき、従来非公開であった人事評価基準50項目を従業員に開示。

実務以外の評価ポイントを明確化し、採点も従業員本人と上長による共同で行うことに刷新しました。

④社員登用制度導入

評価制度刷新の過程で、非正社員である従業員も会社のことを考えてくれていることが判明したので、社員登用制度を導入しました。

(4)改善施策の成果
①物理的成果

近隣同業他社と協力体制を構築し、休日出勤を従来の6割まで減少させることに成功しています。

②精神的成果

働きやすい環境づくりに向けての従業員の自発的行動を醸成したことで、繋忙期のギスギスした雰囲気が緩和されるなど成果が出ています。

事例から学べる事

従業員の幸福度向上がもたらす効果を期待してエンゲージメント活動を開始しています。

従業員満足度調査の結果を踏まえ、企業の方向性を全従業員に対して社長自ら表明、改善提案を募集することで、従業員のエンゲージメント活動への主体的参加を醸成しています。

人的資本経営の最終目標である「従業員エンゲージメント」の効果を意識して様々な施策が展開されたため、成果との相乗効果が生まれる活動になりました。

動的な人材ポートフォリオではなく、ステークホルダーとの関係強化で、職場環境を改善し従業員エンゲージメントを高めることに成功しています。

おわりに

第一章の事例は、ダイバーシティではなくインクルージョンを強化し新事業を立ち上げ、第二章の事例は、動的な人材ポートフォリオではなくステークホルダーとの関係強化で成果をあげています。

いずれも人的資源不足と厳しい雇用環境という中堅中小企業の制約を補う形で、人的資源経営を導入しているのです。

また、前者の事例では個々人の研修テーマと社内研修の課題を短期ではなく中長期的基準で選定しています。

後者の事例では「従業員エンゲージメント」を頂点に各施策が展開され、経済産業省の掲げる定義と推奨する形で人的資本経営を導入しており大変参考になります。

著者:maru
2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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