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大卒者を雇用する際の在留資格、「技術・人文知識・国際業務」と「特定活動」

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日本の大学を卒業した留学生が利用できる在留資格に、「特定活動」があります。

2019年5月に内容が一部改正され、これまで対象だった「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で規定する職種よりも、さらに業種が拡大され、留学生の卒業後の窓口が広くなりました。

ここでは、2つの在留資格の違いと、どのように留学生の就職先が広がったのかをご説明します。

留学生を雇用する際に利用できる2つの在留資格

採用活動のなかで、日本の大学に留学してる外国人学生が応募してくることがあります。留学生を採用した場合、主に考えられる在留資格の選択肢は2つです。

一つは、文系・理系の専門職に就いた外国人に多く利用される「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です。

この在留資格は、大学や専門学校で学んだ知識に関連した仕事に就く者や、翻訳・通訳業務を行う外国人を対象としています。

その職種の範囲は幅広く、経理・マーケティング・広報・エンジニア・生産管理等、日本で就労する外国人に一番多く利用される在留資格でもあります。

もう一つは、「特定活動」の在留資格です。特定活動とは、法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格です。

その活動は、留学生が卒業後に就職活動を行う際に利用する、有償インターンシップ、医療・入院など、多岐にわたります。

2019年5月に施行された変更により、日本の大学・大学院を卒業し学士以上を取得した外国人は、日本語を用いた翻訳・通訳等の円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することが可能になりました。

これを、特定活動在留資格46号と呼びます。また、従来では認められなかった「飲食店・小売店のサービス業」「製造業」への就労も許可されます。

日本の大学・大学院を卒業した留学生を雇用する際は、この「技術・人文知識・国際業務」と「特定活動」の二つの在留資格が大きな役割を果たします。

以下に、2つの在留資格の申請条件についてご説明します。

技術・人文知識・国際業務の申請資格

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、主に事務系・技術系の専門職を対象とした就労可能なビザです。学歴または過去の職歴や、従事する職務内容の関連性が在留資格の審査に影響します。

「技術・人文知識・国際業務」の対象となる活動

この在留資格の対象となる活動は、「技術」「人文知識」「国際業務」の3つに分類されます。

  • 技術:「自然科学の分野に属する知識を必要とする業務」
  • 人文知識:「人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」
  • 国際業務:「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」

たとえば、システムエンジニアであれば「技術」、経理や総務、生産管理などは「人文知識」、翻訳・通訳、海外との取引業務は「国際業務」に該当します。

申請の要件

申請に必要な学歴または職歴は、以下の2つに分けられます。

・「技術」「人文知識」に該当する業務の場合

原則として、以下のいずれかを満たす必要があります。

(1)    大学卒業程度、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
(2)    日本の専門学校卒業程度
(3)    10年以上の実務経験(在学期間含む)

・「国際業務」に該当する業務の場合

  • 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること
  • 3年以上の実務経験

※ただし、国際業務において大学を卒業した人が、「翻訳」「通訳」「語学指導」の業務を行う場合は、実務経験が免除されます。

外国人だからといって、安易に「翻訳」や「通訳」の職種で雇用しても、国際業務の在留資格が取得できるとは限りません。

取引先に外国企業があり業務で外国語を用いる必要性が証明できたり、会社の事業内容が「翻訳・通訳」である必要があります。

日本の大学や専門学校を卒業し、学歴と関連した「技術」「人文知識」「国際業務」のいずれかの活動に該当する専門職で雇用する外国人は、この在留資格の利用を検討できます。

外国人留学生の特定活動(46号)の申請資格

日本の大学・大学院を卒業した留学生が利用できる就労可能な在留資格です。

活動範囲の専門性が限定される「技術・人文知識・国際業務」とは異なり、「飲食店等のサービス業」「製造業務」への従事が認められています。

特定活動の対象となる業務

改正により、新たに加わった特定活動46号の対象となる業務は以下の通りです。

  • 日本語を用いた円滑な意思疎通を有する業務であること(例:翻訳や通訳の要素が含まれる業務。レジャー施設でホールスタッフ兼外国人宿泊客への案内業務)
  • 日本の大学または大学院において習得した広い知識及び応用的能力を活用するものであること。従事する業務内容に、「技術・人文知識・国際業務」の対象となる学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務が含まれること。

【業務例】

  • 飲食店に採用され、店舗で外国人客に対する通訳も兼ねた接客業務を行う。
  • 工場のラインで、作業指示を技能実習生やほかの外国人に対して外国語で伝えつつ、業務を行う。
  • 小売店において、仕入れや商品企画を担当し、あわせて外国人客に対する接客も行う。

申請の要件

特定活動の申請にあたっては、以下の条件を満たす必要があります。

  • 学歴要件:日本の4年制大学の卒業、または大学院の修了
  • 日本語能力要件:日本語能力試験「N1」または、BJTビジネス日本語能力テストで「480点以上」。大学・大学院で日本語を専攻したものは、上記要件を満たすものとされる。
  • 雇用形態:フルタイムのみ。パートタイムやアルバイトは不可。
  • 給与:日本人と同等以上の給与水準であること

▼参考:出入国在留管理庁『留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン

特定活動は、アルバイトで勤務する留学生を卒業後も雇用できる

特定活動の一部改正で、日本語を用いた翻訳・通訳業務であれば、従来は就労不可だったサービス業や製造業でも留学生がフルタイムで勤務することができるようになりました。

これにより、たとえば飲食店で働いていた留学生を、大学卒業後に正社員として雇用することが可能になります。採用したい留学生の状況と職種をもとに、企業側は適切な在留資格が何かを理解しておくことが大切です。

著者:佐伯文弘

ビザや会社設立など外国人への法律サービスを数多く手がける国際行政書士.司法書士。ニーズが増え続ける外国人雇用の分野でのビザ申請、会社設立では登記から経営管理ビザまでワンストップでの処理が可能、その他許認可申請など外国人がからむビジネスでは頼りになる専門家。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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