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中堅中小企業は副業を容認すべきか?

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近年、働き方改革の推進に伴い、大企業を中心にして「副業」の解禁や推進が始まっています。

副業を解禁したきっかけは何か?私達中堅中小企業は副業に対してどう対処すべきかを考えてみましょう。

働き方改革に伴う副業の考え方の変化

従来、日本の企業は副業禁止でしたが、厚生労働省が2018年1月に発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や近年のテレワーク拡大の影響もあり、大企業中心にして、副業が解禁になりつつあります。

特に、厚生労働省が改訂した「モデル就業規則」では、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、事実上、副業が解禁されたと言えます。

【参考】厚生労働省 雇用・労働 副業・兼業

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

副業の現状

さて、私達中堅中小企業において、副業の現状はどうなっているのでしょうか?

日本の人事部が2021年3月に調査した結果によると、

「認めていない」企業が48.4%
「制度を設けて認めている」(27.3%)
「制度は設けていないが制限もしていない」(13.9%)
「今後制度を設けて認める予定である」(6.8%)

を合わせた回答が合計で48.0%でした。

同社の2020年の調査に比べて、「認めていない」が10.6ポイント減で、「制度を設けて認めている」が4.6ポイント増という結果になっています。

全体としては、副業・兼業に前向きな企業が増加しているようです。

副業を企業規模別にみてみると、副業を認めない割合は501~1000人の企業(64.9%)で高くなっていますが、5001人以上の企業(20.8%)では低くなっているのがわかります。大企業ほど副業の容認が広がっているようです。

【参考】日本の人事部 「副業・兼業に前向きな企業が増加。従業員のモチベーション向上に期待?」

https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/2699/

中堅中小企業における副業のメリットと課題

中堅中小企業において副業はメリットがある一方、解決しづらい課題もあります。

メリット

・イノベーションの源泉
デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめとする新規事業開発などにおいては、新たな視点でビジネスを発想することが求められます。従業員が自社の外で発揮したり、習得したりしたノウハウは、自社内でも取り入れることができるかもしれません。

・他社副業人材活用の視点
他社の有能な副業人材を活用することによって、新規事業を開発したり、販路を開拓したり、IT化を支援したりすることも可能です。近年、副業人材のマッチングサービスも始まっています。

・報酬不足をカバー
大企業に比べて、中堅中小企業の給与水準は、相対的に低いと言われています。自社の業務に支障のない範囲でその不足分をカバーできたとしたら、企業側にもメリットがあります。

・エンゲージメント(会社に対する貢献心)の高揚
パーソル総合研究所がアジア太平洋14か国・地域を対象に調査した「APAC就業実態調査・成長意識調査(2019年)」によると、日本人の社員は、「現在の勤務先で継続して働きたい人の割合」も「転職意向のある人の割合」も低く、今の会社に愛着も無いが、かといってそこを抜け出して新天地に飛び込むほどの勇気もない「無気力」な意識の状態であることがうかがえます。

【引用】日経新聞電子版 核心 「日本企業の偽りの優しさ」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60032360V10C22A4TCT000/?unlock=1

日本の企業は長期の平成不況にもかかわらず、極力解雇を防いできた結果、社員の失業は防げたものの、社員の仕事に対する意欲を失っている現状があります。

そういった意味でも、副業によってやりがいを感じられる場を提供することは、社員のロイヤルティやエンゲージメントを高める効果が期待されます。

課題

・過剰労働の恐れ
副業を容認すると、必然的に総労働時間も増加します。総労働時間が増せば、従業員は疲労しますし、その結果病気になったり、労働災害の原因になったりします。

副業が原因で労働力そのものが失われては、何にもなりません。

・離職の可能性
他社で副業をするということは、一定のニーズに適応できているということです。そのニーズが高まり、報酬が増えれば、転職の可能性も出てきます。

・情報漏洩
同じ労働者が複数の職場で労働するわけですから、当然社内の機密情報を漏洩する可能性が出てきます。特に、関連する業界で副業する場合には、注意が必要です。個人レベルの損失どころか、場合によっては業績の悪化、企業倒産の引き金にもなりかねません。

中堅中小企業における副業人材活用の事例

中堅中小企業においては、依然自社社員に対する副業解禁の傾向は少ないものの、大企業の副業社員を活用した新事業の開発などは始まっています。

人材紹介の株式会社ビズリーチでは、自社の登録会員に対して、副業人材の公募を行い、中堅中小企業だけでなく、教育業界や行政の改革、地方創生などにも大きな成果を出しています。

事例1 学校法人改革

・学校法人 昭和女子大学 理事長特命補佐 CSO / CROの事例
・期間 :2018年11月~12月
・使用サービス :ビズリーチ
・ポジション :理事長特命補佐 CSO、理事長特命補佐 CRO

坂東眞理子理事長・総長が推進する企画をサポートする職種ということで、2種の案件に関わる特命補佐を募集。

2種のポジションに対しで計769名の応募と大きな反響を得た。特にダイバーシティの担当補佐には多くのビジネスプロフェッショナルが応募。

大学改革のためには民間企業で最先端のノウハウを持つ人材が必要とのことで公募に至ったが、まさに相思相愛のマッチングになっている。

事例2 未活用資産活用企画

・ホテルニューアカオ(熱海)25万坪の敷地の新企画プロデューサー
・期間 :2018年10月~11月
・使用サービス :ビズリーチ
・ポジション :新企画プロデューサー

中小企業庁の委託事業内での支援。25万坪の広大な敷地に2つのリゾートホテルと2つのリゾート施設を運営する企業が、未活用部分の有効活用を目指し、新規コンテンツの企画プロデュースを担う兼業・副業人材を募集。

100名近い応募者のうち、PR会社やメーカーのブランド管理に従事している女性が採用され、活動中。

【引用】株式会社ビズリーチ 「民間人材の兼業・副業事例」より抜粋

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/08/__icsFiles/afieldfile/2019/08/29/1420695-07.pdf

まとめ

働き方改革の推進を受けて、全般的には副業容認の風潮が広がりつつある現状ですが、中堅中小企業にとっては、ストレートに推奨しづらい現状にあります。

しかし、広い視点に立って人材の有効活用を考えていくと、社員のエンゲージメントの高揚や他社の副業人材の活用など、大きなメリットも秘めています。

さらに副業人材は、自社だけでなく、行政や地方の活性化にも貢献できることが、ご理解いただけたと思います。

私達中堅中小企業は、働き方改革の一環として普及していく副業拡大の流れを変えることは出来ません。むしろ副業をプラスと捉え、活用していきたいものです。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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