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新製品開発に活用する手法・ポジショニング分析

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ポジショニング分析の代表的な活用方法として、真っ先に取り上げられる用途が「新製品開発」です。

少子高齢化の現代、特に需要が減少している消費財の分野では、いかに魅力的な製品をタイムリーに世の中に送り出せるかというのが、メーカーとしてのキーポイントになります。

今回は、ポジショニング分析を活用して新製品を検討する方法を見ていきます。

新製品開発におけるポジショニング分析の意味

製品を造れば売れる時代は終わりました。消費者は自分のライフスタイルに合った商品だけを必要な時に少量ずつ購入する時代に突入しています。

しかも製品の寿命(新製品が市場に登場して廃棄されるまでの期間)も短くなっています。

メーカーとしては、消費者のライフスタイルや嗜好の変化を迅速にキャッチして、尚且つライバル他社製品との競争に打ち勝っていかなければなりません。

そういった意味でも、先ず自社製品群とライバル製品との位置関係を知っておかなければなりません。

それには、ポジショニング分析が最も簡便で有効な方法といえます。

ポジショニングの方法論、手順

1.分析軸(属性)の設定

①製品を特徴づける属性を思いつくままリストアップ

分析を始める前に、対象の製品の特徴を表す属性を考えてみます。

その際、思いつくままに自由にリストアップすることが重要です。開発担当者だけでなく、製造や営業の意見も入れるのも有効です。

【分析軸(属性)の例】

・グレード 高級向け⇔大衆向け 高機能⇔低機能
・価格   高価格⇔低価格
・対象   初心者向き⇔マニア向き 大人向け⇔子供向け
・味    甘口⇔辛口 濃い味⇔薄味
・成分   強炭酸⇔微炭酸

②対立する属性を組み合わせる

リストアップされた分析軸(属性)の中から、分析に使えそうな属性を選んでいきます。

その際のポイントは、「消費者の視点」です。消費者が購入する際に判断基準にしていることや、購入後に評価している属性を中心に選んでいきます。

次に、選んだ属性の中から、2つずつの組み合わせを作っていきます。
その組み合わせは複数あっても構いません。

③軸の組み合わせで二次元の座標を作る

組み合わせた分析軸(属性)で二次元の座標を作ります。座標の大きさは、分析する製品数を想定して、大き目の用紙(模造紙など)を準備します。

2.ポジショニング設定

①自社既存製品を配置する

先ず、新製品を考える前に、自社にある既存の製品を配置してみましょう。改めて自社製品シリーズの開発コンセプトが確認できます。

②他社・ライバル製品を配置する

さらに、同種のライバル他社製品も配置してみます。その際、同じ販売経路で売られている、出来るだけ多くのメーカーの製品を配置してみましょう。

③配置後のチェック、工夫

製品を配置する場合は、その製品の画像を使用するとイメージが湧きやすくなります。

また、製品ごとの売上が分かれば、その大きさに合わせて拡大した画像を使うとさらにイメージが湧きやすくなります。

配置してみて、同じ象限(※注釈1)に製品が集まるような属性の組み合わせは、あまり好ましくありません。製品間の違いや位置関係が明確に出来ないからです。

ポジショニング分析・活用の仕方

自社とライバル社の製品を配置した後は、いよいよ新製品開発のための分析です。

具体的には、どの象限で新製品を開発すべきか、ということを決めていく事になります。

・人気製品の象限に投入「残留」

どんな新製品を開発すべきか、という際の方向性としてまず考えられるのが、すでに人気が出ている製品が配置されている象限に新製品を投入するという考え方です。

最もヒットする可能性が高いわけですが、反面、価格競争に陥る可能性もあります。

・優位性を発揮したい「差別化」

人気象限に新製品を投入するのは王道ですが、製品寿命が短い現代では、投入後にはブームが終わっていたということも多いものです。

既存製品と差別化し、優位性を発揮しながら長く収益を稼ぎたいときには、あまり集中していない象限を狙うのも手です。

・全く新しい領域に活路を見出す「新分野進出」

人気の製品が集中する象限と対角線上にある場所に、敢えて進出するという方法もあります。

全く従来のテイストとは違う製品となるケースですが、ブランドや提供方法、価格設定等に工夫を凝らして、独自の市場を獲得することも可能です。

・カニバリズムにも留意

新商品の配置で注意したいのは、同じ象限にいるその会社の既存製品との棲み分けです。

既存製品をリニューアルする意図から、敢えて同じ象限に新製品をデビューさせ、既存製品を古く見せる「計画的陳腐化」という戦術もありますが、自社製品同士で共喰い(カニバリズム)を起こしてブランドイメージを下げたりする恐れもあります。

敢えて同じ象限に投入する場合は、目的を明確にしておかなくてはいけません。

・ディスカッションが重要

ポジショニング分析は、ディスカッションしながら進めることで、既存製品の特徴やライバルとの位置関係などを関係者が共有することにより、製品の問題点や、新たなコンセプトが生まれてくる可能性を秘めています。

アンケートデータの活用

ポジショニング分析は、企業のマーケティング担当者を中心に進められますが、そのもとになるデータを消費者アンケート化することにより、更なる効果が期待できます。

ポジショニング分析で重要なのは分析軸(属性)ですが、製品ごとの属性のレベルを決定しているのはマーケティング担当者です。

つまり、プロとしての視点で製品の特性を分析していますが、消費者ではありません。

消費者向けの製品アンケートに分析軸(属性)の項目を設けていれば、より客観的な消費者の声を反映したポジショニングになります。

さらに、そのアンケートを継続的に行っていれば、製品ごとの座標の位置も変化していきます。

つまり、消費者ニーズの変化も把握できるというわけです。

まとめ

新製品の開発の際にポジショニング分析を活用する方法をみてきましたが、いかがだったでしょうか?

新製品開発の分析では、既存の自社製品やライバルの製品を一堂に置いて概観することにより、現状の製品の位置関係のみならず、各社の製品戦略も見えてきます。

さらに、顧客ニーズにどう対応していくかという戦略も考えやすそうですね。

ぜひ、企業内で実践してみてはいかがでしょうか?

先ずは社内の情報共有・戦略方向の確認という目的だけでも、充分に価値がある手法ですね。

 

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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