多様な人材の確保
総務省の調査によると、日本国内の労働力人口は2008年をピークに減少傾向にあり、今後も労働力人口の減少はますます加速すると見られています。
結果として少子高齢化による国内の財政や年金問題にもつながっていくのです。
これらの問題を解決するには、女性や高齢者、障害者、外国人などの多様な人材の活用で不足する労働力や知的資源を補うことが、今後ますます必要といわれています。
またIT時代とともに、労働者の働き方やキャリアに対する考え方は多様化しています。従来までの正社員思考や、終身雇用制度などの雇用形態にこだわらず、やりたい仕事を求めて転職をする人も珍しくありません。
企業側は、多様化する人材のニーズに応え、国際社会で生き残るために、人材獲得競争で他社に後れを取らないためにも、積極的にダイバーシティを実践し、採用力を高める必要があります。
グローバル化への対応も必須
産業の空洞化が進む日本国内において、海外に生産拠点を構える、海外市場に進出するなど、ビジネスのグローバル化はますます加速しています。
グローバル化に対応するためには、外国人材の活用は必要不可欠となるため、企業側は治安なども含めた受け入れ体制を整えていかなければなりません。
ダイバーシティを推進することで、外国人材が働きやすくなり、グローバル化の推進や日本人のスキルアップや国際感覚を身につけることにもつながります。
この点を理解していけばより充実した、様々な方が充実したワークライフバランスを送っていくことができます。
ダイバーシティ経営がもたらすもの
ダイバーシティ経営は、企業と従業員、双方に多くのウィンウィンのメリットをもたらすので、経営者や管理層はその点をきちんと理解しながらマネジメントをしていかなければなりません。
多様な人材を戦略的かつ効果的に活用することで様々なメリットを享受できるのです。
情勢の変化を捉える
大手のシンクタンクやコンサルティング会社が行った調査を見ていくと、ダイバーシティとイノベーションの成果には相関関係があるとの見解が発表されています。
ダイバーシティ経営のそもそもの目的は「オピニオン・ダイバーシティ」とも呼ばれていることをご存知でしょうか。
多様な視点からの意見を柔軟に取り入れて活用することで、それまでの同質的な組織では得られないアイデアや着想、人脈やスキル、ひらめきが生まれ、新たな商品や革新的なサービスを生み出しやすくなるからです。
そのメリットや長期的な永続を意識することで、従業員それぞれが自分らしい働き方や今後を生きぬいていくノウハウや知見を得ることができるのです。
女性の働き方が鍵となる?
大手の外資系金融機関が実施したアンケートでは、全世界の時価総額100億ドル以上の企業で、女性取締役が1名以上いる企業のほうが、そうでない企業よりリーマンショック(世界的金融危機)後の回復力が強くなっているという結果が公表されています。
新型コロナ問題をきっかけとして、常に変化し続ける世界経済にあって、国籍や性別を問わず多様な人材が活躍する組織は、旧来までの閉鎖的な社会と比較して、同質的な組織よりも環境変化に強いといえるのではないでしょうか。
最近巷で言われている働き方改革やダイバーシティ経営は相互に密接に関係しています。
ダイバーシティ経営を実践するにはまずは働き方の見直しや生産性向上、福利厚生精度の拡充、人事や能力に対する適正な評価が必要不可欠だからです。
以前発表された世界男女平等ランキングでは、日本は153か国中121位と低迷し、日本のダイバーシティ経営は世界的に見てもまだまだ遅れているといえるのではないでしょうか。
最近になって派遣社員なども含めて女性の社会進出もすすんでいますが、まだまだ浸透していないのも現状です。
また労働者の約7割がダイバーシティの重要性を実感しているにもかかわらず、そのうち効果を実感しているのは3割を下回っていたのです。
やはり、言語の壁や旧来型の男尊女卑的な封建的かつ保守的な考えが根強く残っているのが現状ではないでしょうか。
働き方改革の模索
日本での働き方改革はまだ始まったばかりです。しかしリモートワークやワーケーションなど、多用な働き方が進んでいくなかで、働き方改革がさらに進むことで、ダイバーシティ経営や啓蒙も進み、様々な相乗効果も期待できるのです。
ただ給料というインセンティブだけではなく、福利厚生やスキルアップなど従業員が仕事に対して感じている充実感や満足度を表すワークエンゲージメントは、働く環境や人間関係にも左右されます。
リモートワークやワーケーションなど柔軟な働き方を選べる環境は、ワークエンゲージメントや離職率低下を高めます。
夫婦共働きが当たり前の時代である以上、男女共同参画社会を作り、働き方を選べない環境だと、従業員が不満を感じ、結果としてワークエンゲージメントも下がってしまうかもしれませんのでマネジメント層はその点を考えた経営をしていかなければなりません。
ダイバーシティにより、さまざまな人材の交流が生まれることは、従業員に知的刺激や国際感覚を与え、結果として仕事に対するモチベーションアップの効果も期待できます。
その点を組織側がきちんと理解していくことで、会社も従業員も適切に社会に同化でき、ワークライフバランスを叶える幸福な人生を楽しんでいくことができます。
優秀な人材を確保・働きやすい職場作り
また多様な人材を登用、活用するだけではなく、働き方にも柔軟な多様性を持たせることで、優秀な人材の流出を防ぐリテンション効果も期待できます。
給与の面ばかりではなく、育児や介護など総合的な観点で働き方を変える必要があります。
結果として長く働く知識のあるベテラン人材が退職するケースも減少し、組織の活性化にも繋がります。
まずは労働環境を整備し、働きやすく復帰しやすい職場にすることが、人材を維持・確保することにつながります。
働き方改革関連法とは
さて、ここからは「働き方改革関連法」についても確認していきましょう。
改めて働き方改革関連法とは何か、経営者やリーダーとして何をおこなっていかなければならないかを人事担当者や経営陣として、いつまでに何をどのようにするべきかを見ていきましょう。
ダイバーシティ経営を推進するには、人事や経営者の観点から具体的にはどのような方法や施策が必要なのでしょうか。
ここからは「ワークスタイル」「職場環境」「キャリア支援」それぞれにまとめましたのでそれぞれ確認していきましょう。
ワークスタイル
リモートワークやワーケーションの進展に伴って、裁量労働制やフレックスタイムなど働く時間や場所、通勤時間の短縮などを柔軟に導入し、検討することも効果的です。
現在はワークライフバランスを重視する人も多くなっており、このような働き方を推進していることをアピールできれば、その会社の採用力向上につながります。
結果として自分らしい働き方や仕事とプライベートの双方を楽しんでいくことができます。
キャリア支援
ダイバーシティの推進には育児休業や介護休業などの制度を整備することも大切ですが、有給休暇や育児休業の取得や利用しやすい雰囲気作りが重要です。
社内に専門の相談窓口の設置や休業後の復職支援などがあれば、とくに女性の活躍を推進する職場では効果が期待できるのではないでしょうか。
職場環境
テレワークやサテライトオフィスなどを積極的に導入し、働く場所を柔軟に選択できようにすることも有効です。
新型コロナウイルス感染症の影響で、都心を離れて地方で再就職するケースも増えつつあるのが現実です。
また本社機能の1部を地方に移転させる企業も増加傾向にあります。
地方で自然に囲まれながらのんびりとした生活で心を癒やすことで、充実したワークライフバランスを目指すのがこれからの生き方ではないでしょうか。