こんにちは!栗原誠一郎です。
大卒内定9年ぶり減?
先日、主要企業の2020年3月卒内定者数が2019年春採用実績数と比べ0.5%減ったと日経新聞の報道がありました。
前年実績を下回ったとのことで、「企業が採用数を減らした」という印象を与えますが、調査企業の内、53.8%の企業が採用計画未達とのことですから、一概に「企業が採用数を減らした」とは言えません。
ちなみに昨年同時期に行われた日経新聞による調査では、50.4%の企業が採用計画未達でしたから、昨年よりも企業が採用で苦戦を強いられたというのが実情でしょう。
中堅中小企業への就職希望者が増加
日経新聞は主要企業について報道しましたが、中堅中小企業の実態はどうなのでしょうか?
リクルートワークスが行った「大卒求人倍率調査(2020年卒)」によると、従業員規模別にみた求人倍率は以下のようになっています。
5000人以 0.42倍(2019年卒は0.37倍)
1000~4999人 1.08倍( 同 1.04倍)
300~999人 1.22倍( 同 1.43倍)
300人未満 8.62倍( 同 9.91倍)
このように999人以下の中堅中小企業においては、求人倍率が大手より依然として高いものの、若干低下しています。
この理由は999人以下の中堅中小企業の求人数は2019年卒に比べて変化がなかった(300~999人:2.2%増、300人未満:3.0%減)一方で、求職者は2桁増(300~999人:19.4%増、300人未満:11.6%減)になったからです。
これはマイナビが行っている「2020年卒大学生就職意識調査」の結果にも表れています。2013年卒から上昇しつづけていた大企業志向が2019年卒をピークに2020年卒では若干低下しています。
さて、この理由は何でしょうか?
「ノルマ」や「転勤」は嫌われる
上述したマイナビの調査資料には、「どのような会社に行きたくないか?」という質問に対する結果の推移も掲載されており、2019年卒までと明らかな違いは、「ノルマがきつそうな会社」「転勤の多い会社」の2項目で数値が高くなっていることです。
本来はクロス分析を行ってより正確な関連性を調べる必要はあるものの、大企業の方が、こうしたイメージが強いのかもしれせんね。
今回の結果が異常値かどうかは分かりませんが、大企業志向の低下が強まる可能性は十分にありえます。
大卒進学率の変化と就職先決定理由
下図は文科省が調査している大学(学部)進学率の男女別数値の推移ですが、男性は56%付近で頭打ちになっている一方、女性は一貫して毎年高くなってきており、2019年で51%程度ですが、今後、男性と同水準になることは確実でしょう。
そして女性は男性に比べて、希望する地域で働けるかどうかが就職先を決める決定要因になる可能性が高いのです。
リクルートキャリアが2019年1月に発表した就職内定者に対するアンケートによれば、男性が就職先を決める決定要因となった要素の第1位は「自らの成長が期待できるかどうか」ですが、女性の場合は「希望する地域で働けるかどうか」が第1位になっています。
この調査は2019年卒に対するものですが、企業の採用担当者に2020年卒の採用面談の話を聴いてみても、その傾向の違いはあると思います。
したがって大学卒業者に占める女性比率が今後も高まる中で、転勤が多いというイメージが強い大企業よりも、転勤が少ないイメージのある中堅中小企業が就職先候補になる可能性は十分にあるのです。
就活生に「選ばれる」企業になる
しかし、あくまでもイメージでしかないので、実際に就活生が就職先を決めるのはあくまでも実態であることは当然です。
大企業でも勤務地限定制度等の整備をする企業が増加していますが、広域に拠点展開をしている中堅中小企業でも同様の制度の整備は必要になるでしょう。
また、大卒者に占める女性の比率が高まってきているにも関わらず、未だに「できれば男性」を採用したいと思っている企業もあると思います。
しかし、早くそのような意識を捨てないと、男性ばかりか女性の就活生からも見捨てられる企業になってしまうでしょう。
もちろん、組織の硬直化等、勤務地を限定することの問題があることも確かですが、人を採用できなければ企業の存続はありえません。
採用する就活生を「選ぶ」前に、就活生に「選ばれる」企業にならなければ話にならない訳です。
就活生の意識が変わってきていることをチャンスととらえ、大企業以上に柔軟な雇用体制の構築に挑む時だと私は思います。
さて、あなたの会社はどうしますか?