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佰食屋に学ぶ、新しい働き方の意義とは

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先進企業とは、何もハイテク企業のことではありません。従来の業界の常識にこだわらず、新しい考え方で新境地を切り開いている企業のことを言います。

今回は、業界の常識を覆すことで働き方改革に成功した飲食業「佰食屋」の事例を通して、経営の考え方を根本から考え直してみたいと思います。

飲食業の常識を打ち破った「佰食屋」の経営スタイル

佰食屋は、株式会社minittsの代表取締役社長である中村朱美(36)さんが、約9年間勤務した学校法人の広報職を退職して起業した、国産ステーキの専門店です。

起業のきっかけは、夫の作ったステーキ丼が、あまりに美味しかったことでした。

佰食屋は、売上を増やすことを目的とせず、1日「100食」限定で販売することをコンセプトにしています。

100食売り切れば閉店であるため、食品ロスも出ず、働くスタッフの残業もありません。

逆回転の経営発想

通常の経営者であれば、売上の規模を拡大し、最大の利潤を獲得することを目指します。そのための根本ロジックが大量仕入大量販売です。

つまり、店舗を増やし、仕入の単位を拡大すれば仕入原価が低下し、利益が増えます。その利益を元に更に店舗を増やせます。

つまり、夢のようなサイクルで売上・利益が拡大するわけです。

しかし、それは、顧客ニーズが変化しない場合や、ライバルがいないことが条件です。つまり顧客ニーズが変化するために、新商品を開発したり、PRしたりしなくてはいけません。

また、ライバルとの価格競争に陥る場合もありますし、差別化を図るために店舗のリニューアルを図ったりもしなくてはなりません。

その結果、それらのコストをまかなうために、さらなる規模の拡大で大量仕入れ大量販売で利益を出そうとしますが、大量出店し過ぎて競争が激化し、売上が減少に転じます。そのため、巨大チェーンでも最終利益は赤字ということも珍しくありません。

しかし、佰食屋では、売上を敢えて限定しています。そのため、ロスも出ませんし、残業も無いので無駄な人件費も発生しません。固定費を賄えば、絶対額は少なくとも、安定した利益が獲得できます。

経営の目標とは一体何か?を問う佰食屋

佰食屋の経営スタイルを見ると、つくづく経営することの意味を考えさせられます。

企業規模が拡大すれば、多くの商品売買の機会が増え、利益も拡大します。

しかし、その企業で働く従業員は、売上・利益の拡大に伴って本当に幸せになっているでしょうか?規模の拡大に伴って残業が増え、家族との時間も無く、子育てや介護との両立も出来ず、場合によっては体を壊すことも多いのではないでしょうか?

そもそも、多くの企業は、経営理念に「顧客満足」や「従業員満足」、「環境保護」などを謳っています。しかし、規模の拡大に伴って、その理念を達成しにくくなっている現実があります。

佰食屋は、現代のビジネスモデルに一石を投じようとしているのです。

「佰食屋」に学ぶ今後の新しい働き方

一方、佰食屋における働き方はどんなものでしょうか?

佰食屋では、目標食数を売り上げれば、その時点で閉店です。そのため、残業はありません。残業代は無いため、従業員は多くの収入を得ることが出来ないかもしれません。

しかし、早く仕事が終わることで、自由な時間が増え、家族との時間を楽しむこともできます。時間を子育てや介護に使うこともできます。

代表の中村さんは、学校法人の広報職をしていたころ、仕事自体は楽しかったものの、長く働くにつれて、後輩や部下ができ、その人たちを早く返すために自分が仕事を背負い、どんどん自分が帰れなくなって、自分が望んでいた子供を産むことや、子供ができてもやりがいのある仕事を続けていくという未来が、先輩を見ても叶えられそうにないと感じていました。

そこで、「自分が働きたいと思える環境がないんやったら、自分で作ったらいいんじゃない?」という感じで起業したそうです。

本来、人を幸せにするための企業活動が、人を幸せにしにくくなった現代、人の幸せの達成方法から出発した中村さんの発想は、新たな働き方を私達に教えてくれているようです。

【参考】起業のトビラ 「働きたい環境がなければ、作ればいい」。1日100食限定「佰食屋」が生まれるまで

https://bizble.asahi.com/articles/2021071200046.html

まとめ

従来の経営の常識を打ち破った佰食屋の経営スタイルや、それに伴う「働き方改革」についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

私達は、中堅中小企業の企業人として、日夜売上や利益の維持拡大にまい進していますが、その企業活動の目的は達成できているでしょうか?

そもそも、企業活動は顧客だけでなく、従業員や地域、環境も含めてWin-Winの関係を築くことが目的だったのではないでしょうか?

佰食屋のコンセプトは、私達に、経営の原点を示唆してくれているようです。改めて、企業目標や理念について、その実現方法を見つめなおしたいものです。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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