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「モノ」から「コト」への変化の先進事例

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高付加価値を創造する企業

マーケティングからロジスティックスまで印刷に関わる全てを顧客に提供しています。

2016年版中小企業白書事例2-6-2

企業の紹介

・企業名:水上印刷株式会社
・事業内容:オフセット印刷及び特殊印刷を主力とする企業
・資本金:1,000万円
・従業員数:正社員 263名 非正社員 312名 (2021年5月現在)

フルサービスモデルを始めた背景

経済産業省工業統計調査によれば、印刷業は、1991年の8兆9,286億円の出荷額をピークに現在は5兆円を割って、30年で市場規模がほぼ半減している厳しい業界です。

水上印刷も例外ではなく、売上の20%を占めていたフィルムカメラの包装印刷の仕事が2006年になくなりました。

生き残りをかけてビジネスモデルの変革を模索していたところ、出会ったのがフルサービスモデルです。

時をほぼ同じく、2007年から経営に参画したのがキーエンス出身の現在の代表取締役社長である河合克也氏でした。

フルサービスモデルの概要

水上印刷は、自らが展開するフルサービスモデルを、「SPS(Service-Product-Service)モデル」と呼んでいます。

入り口から出口まで①マーケティング⇒②クリエイティブ(デザインなど)⇒③モノづくり⇒④アッセンブリ(在庫管理)⇒⑤発送・配送の5段階の業務を全て請け負っているのです。

印刷関連事業の入り口と出口で利便性の高いサービスを提供することで、中間の印刷業を過当な価格競争から回避させるビジネスモデルです。

このため、コモディティ化して競争力のなくなった印刷業という「モノ」づくりに属しながら、10年連続増収、10年で利益を3倍以上に伸ばす高収益モデルを実現しています。

事例から学べる事

(ビジネスモデルから学べる事)

水上印刷のビジネスモデルを分類すると、「モノ」に分類されるのが印刷部門(機能的価値)で、「コト」に分類されるのがクリエイティブなデザイン部門(意味的価値)とマーケティングなどのコンサルティング部門、アッセンブリ部門、フルフィルメント部門(使用価値)、印刷産業の入り口から出口まで抑えた水上印刷のバリューチェーン(創造価値)です。

コモディティ化している「モノづくり」を挟む形で様々な「コト」を一連の体験として提供するカスタマ・ジャーニーを構築し、差別化に成功しています。生き残りをかけたモノづくり産業のビジネスモデル変革の参考になる事例といえます。

(収益モデルから学べる事)

フルサービスモデルを提供することで、本来なら価格競争になるはずの「モノづくり」の競争を回避しつつ、下請けにならない100%直接取引で、将来に投資できる収益を生む、同業他社の5倍程度高い利益率を実現しています。

「所有」から「共有」へという消費者の新たなニーズに応える

2019年版中小企業白書事例3-1-8

企業の紹介

・企業名:合同会社atsumari
・事業内容:・個人間楽器シェアリング・プラットフォームの運営・弦楽器および関連商品の輸出入・販売・修理

シェアリング・プラットフォームを始めた背景

起業願望を持ち、常に新規事業について模索していた創業者でCEOの木附(キズキ)氏のもとに、中学生時代からの友人カポラリ氏が弦楽器職人業界の現状を語ったことから、当時中国でシェアリングエコノミーが注目されていたことに目をつけ、「atsumari:楽器シェアリングサービス」が始まりました。

シェアリング・プラットフォームの概要

楽器を使わずに保管しているだけの人も多く、かといって希望価格では売れないのが現状です。

また、楽器の利用者は、楽器を購入したくてもネットでは「試奏できない」、「楽器についての情報が少ない」といった点がネックとなり、購入に抵抗を感じています。

楽器の職人は、「リペア職人と楽器製作を両立させたい」「奏者ともつながりたい」といった希望を持っています。

三者三様の悩みや希望を解決できるのがこのシェアリング・プラットフォームです。

出品される楽器に同社の厳密な審査が加わることで「貸す・借りる・買う・売る」全てが同一プラットフォームで実現できるようになっています。

事例から学べる事

(ビジネスモデルから学べる事)

合同会社atsumariのビジネスモデルを分類すると、「モノ」に分類されるものはありません。「コト」に分類されるのが、楽器のシェア(意味的価値)、楽器の機能的価値に使用料、メンテナンス費用などソリューションという付加価値を加えた意味的価値として「コト」へ価値を変換、楽器の保守点検サービスと職人技の体験(使用価値)、シェアリング・プラットフォーム(創造価値)です。

合同会社atsumariは全て「コト」化しています。
このプラットフォームジャーニーを通じて、楽器利用者の隠れたニーズウォンツを刺激している点がこのビジネスモデルの強みとなっています。

つまり、コンクールなど一定期間だけ特定の楽器を使用したい、成長に応じて楽器をサイズアップさせたいといったニーズウォンツがあります。

(収益モデルから学べる事)

「システムを提供」しているので、ユーザーが増加してもそのたびにかかるコストは楽器審査の際の保守点検にかかる人件費ぐらいで収益化しやすいビジネスモデルといえます。

「体験=コト消費」を提供することで、インバウンドのニーズを捉えた企業

2019年版中小企業白書事例3-1-12

企業の紹介

・企業名:株式会社梅守本店
・事業内容:寿司等の製造販売、飲食業、宿泊業、観光体験事業など
・資本金:1,000万円
・従業員数:100名

寿司の体験教室を始めた背景

海外大手旅行業者を通じて外国人観光客を集客しました。体験は、職人が実際に着ている衣装に着替え、実際に寿司を握ります。

梅守社長とスタッフ全員で、日本語で明るく場を盛り上げることでエンターテイメント性を高めています。

現在、「うめもり寿司学校」は4店舗まで拡大し、5年間で30万人の外国人観光客が寿司の体験教室を経験しています。

事例から学べる事

(ビジネスモデルから学べる事)

梅守本店のビジネスモデルを分類すると、「モノ」に分類されるのが、寿司等の製造、飲食業、宿泊業、「コト」に分類されるのが観光体験事業(創造価値)です。

「コト」である寿司の体験教室は梅守本店ジャーニーの一部にすぎません。

地域住民及び外国人観光客の「コト」「トキ」欲求を常に満たせるかがカギになっています。

(収益モデルから学べる事)

カスタマ・ジャーニーの一部に過ぎない寿司の体験教室は人件費、原材料費など変動費が発生するので、単体の事業として収益を出せるか難しい部分があります。

カスタマ・ジャーニー全体でどこまで収益化できるかが課題といえるでしょう。

おわりに

水上印刷は、衰退する産業に属し実際苦境に立たされながら、産業の川上と川下に「コト」を見つけ、アズ・ア・サービス化しています。

コンサルを入口にすることでお客様の悩み・原因を探求し、独自のカスタマ・ジャーニーを構築しました。

100%直接取引で将来に投資できる収益を生む高い利益率を実現し、更なる成長が見込めます。

合同会社atsumariは顧客が増えてもコストが増えにくいサブスクリプションのクラウドサービスと似た収益構造を構築し、将来性のある事例といえます。

梅守本店は、体験教室自体、変動費が多く発生し、単独では収益化が難しく、事業全体での収益化が課題の事例です。

「モノ」から「コト」への変化に際して、いかに将来を見据えてカスタマ・ジャーニーを構築し、収益モデルを確立するか、第4回でポイントを説明します。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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