こんにちは!栗原誠一郎です。
外国人の単純労働に門戸開放
政府は新たな外国人労働者受け入れ策を検討しており、その内容がマスコミを通じて明らかになりました。
新たな外国人就労資格を設け、日本語が苦手でも、基本的な作業ができれば合格とし、最長5年の就労を認めるとのことです。
この制度により、建設、農業、宿泊、介護、造船業の5分野において約50万人超の受け入れを目指すとのこと。
日本はもともと外国人労働者の受け入れには慎重な国でしたが、少子高齢化による人手不足の影響を受け、外国人労働者は年々増加しています。
近年、コンビニ、スーパー、ドラッグストアでも外国人労働者の姿をよく見かけますよね。
昨年(2017年11月)には、製造業において実質的な労働力確保策として活用されている技能実習制度が拡充され、そして今回、新たな外国人労働力活用策の検討内容が表にでてきたわけです。
3K職場で外国人労働者を働かせることの悪影響
私はこうした流れには問題を感じています。
まず、日本人もやりたがらない仕事(きつい、危険、汚い)を外国人労働者を従事させるという構図が、外国人労働者(単純労働に従事する外国人労働者、以下同様)に対する差別につながることです。
政府は昨年、外国人労働者を劣悪な労働条件で就労させていないかどうか監督を強化する法律を施行しましたが、この事実そのものが外国人労働者に差別があることを示しています。
警察庁の資料によれば(p5)、近年、技能実習生による犯罪も増加しており、こうした状況が続けば、更に外国人労働者に対する差別につながっていくでしょう。
また、そのような状況は外国人労働者が従事している職業そのもの対しても、「日本人がするような仕事ではない」といった差別にもつながっていきかねません。
現状は、介護業界だけでも150万人以上の就業者がいますから、現在検討している施策を実施しても、外国人労働者の比率自体は小さなものですが、象徴的な影響を軽視すべきではありません。
超円高を乗り越えたきた日本
もう一つの問題は、単純労働力の不足に対して、外国人労働者を活用するということで、本来取り組むべき生産性向上に対する動機付けが下がるということです。
1980年代、日本の製造業は急速な円高により国際比較における賃金コストが高まる中、労働生産性(従業員1人当りの生産性)を高める(資料参照p113)ことで、生き残り、そして発展してきました。
もちろんその過程で倒産する企業も相当発生しました。
でも、そのような生産性向上を実現できなければ倒産するしかないという状況だったからこそ、生産性向上のための改善を考え、実現してきたと言えます。
生産性向上こそが目指すべき道
そもそも、単純労働が低賃金なのは、労働の付加価値が低いからです。そのような労働に多くの労働者を充てることは、その労働者にとっても良いわけがありません。
日本は、少子化の流れが続いており、人口は確実に減少していきます。このままでは日本の経済は縮小していき、世界において存在感の薄い国となっていくことでしょう。
しかし、人口が減少しても、労働生産性を高めることができれば、日本経済としての存在感は維持できます。
また、生産性が高まるということは一人当たりの所得も増えることを意味しますから、国民としての豊かさも実現できるのです。
もちろん、生産性向上は簡単に実現できるものではありません。小手先の工夫などではなく、製造業以外の産業も含め技術開発や仕組みそのものの見直しによる根本的生産性改善が必要です。
しかし、人手不足は短期的な問題ではなく、またその技術は今後海外市場においても活用できるものでもあり、充分に意味のある開発投資だと思います。
外国人労働者活用という名の安易な方向に流されることなく、技術開発により生産性向上を実現する。
これが日本経済そして日本企業が目指すべき方向ではないでしょうか?
さて、皆さんはどう思いますか?