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「信」無くば立たず

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こんにちは!栗原誠一郎です。

改正出入国管理法の施行

昨年成立した改正出入国管理法がこの4月から施行され、この法律に基づく新たな在留資格制度により、政府は5年間で最大34万5150人の外国人を受け入れる方針です。

欧州各国で移民受入が政治問題化する中、日本でも外国人の流入増加による犯罪などの社会問題が増加することを懸念する報道が目立つようになってきました。

そもそも、5年で34万5000人という数字はどの程度インパクトのある数字なのでしょうか?

日本の現在の就業人口は6628万人(2019年1月)総人口は1億2633万人(2019年2月)ですから、34万5000人という人数は、就業者数の0.52%、総人口の0.27%にあたる数です。

更に、そもそも日本には総人口に対してどの程度の外国人が居住しているのでしょうか? 過去からの推移を見てみるとグラフのようになります。

このグラフは国連が保有している移民人口比率推移を表しています。移民人口とは当該国に住む外国生まれの居住者あるいは外国籍の居住者の人数です。この移民人口の総人口に対する比率が移民人口比率です。

このデータによれば、日本は1985年までは0.69~0.70%でほぼ一定でした。

2005年にかけて5年毎に0.2%程度増加、2005年は1.57%と1985年までのほぼ倍の比率となっています。その後は少しペースが弱まり5年毎に0.1%程度増加しているという状況です。

この過去からの流れを考えると、政府のいう34万5000人という数字、つまり比率が0.27%増加するということは、過去にも経験した事(2000年から2005年において移民人口比率は0.25%増加)だと言えるでしょう。

 

多様性を受け入れる順応スピード

更に欧米各国と比べればどうでしょうか?

グラフをみれば一目瞭然ですが、日本の移民増加スピードなど、たかが知れていることがわかります。

また、米国など陸続きの国境がある国は違法流入相当ありますから、このグラフ以上に移民人口は増加していると言えます。

逆に言えば、どうして、欧米各国で移民の増加が政治問題なるかということが良く分かりますね。

ブレグジット問題が起きたことも、トランプ政権が生まれたことも、そして欧州で極右政党が躍進していることも、移民流入が急速に進んでいることと無縁ではありません。

日本にいてマスコミの報道だけを見ていると、欧米で起きている移民排斥の動きを「悪」だと断定的に見てしまいがちです。

そもそも、この環境変化のスピードに対する人々の適応能力を無視して、いくら移民を受け入れることが「正しい」ことで、拒むのは「悪」だというだけでは、結果として状況を更に悪化させるだけです。

確かに原理主義的に移民排斥思想をもっている人間もいるでしょう。

しかし、大半の人々はそこまでの思想は持っていません。ただ単に「安定」を求めているだけなのです。

この求めに応えず不満の蓄積を放置すれば、原理的思想をもった主導者に扇動され、ムーブメントが狂暴化する可能性が高くなります。

 

多様性が生み出すイノベーション

科学技術によるイノベーションはともかく(いや、科学技術によるイノベーションもか?)、世の中を成長させるイノベーションは、何もないところから生まれるのではなく、既に存在する多様な知の「結合」によって生まれます。

その結合は「常識」に囚われていては決して生まれません。異なる価値観、背景をもつ外国人との協働は、「常識」に囚われない思考を導きます。

米国を中心とした、いわゆる最先端企業がトランプ大統領を否定する理由もここにあります。(しかし、トランプも「違法」移民を無くすとしか言っていないのですが。。。。)

したがって、「安定」を求めている人々がどうすれば変化に順応できるか?そこを考え、試行錯誤していくことが今世界で起きている問題を解決し、逆に更なる成長へ導く方法だと言えるでしょう。

 

コミュニティの力

過去3度のピューリッツァー賞(アメリカ合衆国における新聞、雑誌、オンライン上の報道、文学、作曲の功績に対して授与される賞)を受賞したトーマス・フリードマンは、変化のスピ―ドが早く常識が通じない時代の生き方を書いた著作(「遅刻してくれてありがとう」日本経済新聞社)の中で、変化への適応力を人々が身に付けていくためには、政府ではなく、もっと現場に近いコミュニティの力が重要だと述べています。

確かに、現場で起きている問題の状況はそれぞれ異なるし、政府が対応しようとすれば今のアメリカのようにイデオロギー闘争化して、事が進まなくなるということもあります。

したがって、政府に依存するのではなく、現実的な問題にフォーカスできる地域レベルのコミュニティが主体的に取り組む方がより良い結果を生むという考えには納得できます。

このトーマス・フリードマンの本を読み終わったタイミングで、偶然にもTBSで日曜日の朝に放送されている「がっちりマンデー」で北海道の東川町が特集されているのを見ました。

この東川町は、日本で初めての公立の語学学校を創り、外国人だけでなく日本人の人口も増え、活性化しているとのこと。

これがフリードマンのいうコミュニティの力かと思い、調べてみると、少子化対策として短期滞在の日本語学習者を受け入れる事業を始めたのが2009年、2015年に公立日本語学校を開設。

結果、外国人の居住者は増加しています。日本人はというと、それほど増えてはいませんが、直近5年では少なくとも減少はしていません。東川町自身、課題も認識しているとのことですが、「お互いを知る」というプロセスを強化し、「相互信頼」を築けるように試行錯誤続けていることが分かります。

 

「信」無くば立たず

フリードマンは前述した著書の中で、政治学者フランシス・フクヤマの著書『「信」無くば立たず』の中の以下の文章を引用しつつ、ルールや規制ではなく、相互信頼に基づく健全なコミュニティの必要性を主張しています。

“社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)は、社会やその特定部分で信頼が普及していることから生まれる能力である。それはもっとも小さく基本的な社会集団である家族にもあてはまるし、すべての集団の中でもっとも大きい国家や、その中間のすべての集団にもあてはまる。”

“お互いを信頼していない人々は、公式なルールや規制のシステムのもとでしか協働できない。そういうシステムは、ときに強制的な手段で交渉、合意、訴訟、執行が行われなければならない。”

日本は特にかもしれませんが、世の中、何か問題が起きるとすぐルールや規制を作るという話になりがちです。性悪説に偏りすぎると社会コストが膨大になるし、何よりも真の協働は生まれません。

これは移民問題だけでなく、コーポレートガバナンスのような企業の中の問題でも、米中のような国家間の問題でも同じことが言えるのではないでしょうか?

ルールや規制を最低限のもので十分にできるような相互信頼をコミュニティ単位で築いていく。時間はかかるとは思いますが、結局これが社会を発展させる唯一の解決策なのかもしれませんね?

さて、皆さんはどう思いますか

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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