フィンテックパート1
昨今、よく聞く言葉の一つに「フィンテック」があるかもしれません。
「フィンテック(Fintech)」とは、金融を意味する「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。
主に金融とITの融合した最新テクノロジーのことを指します。
今回はフィンテックについてお伝えいたします。
フィンテックとは
最初に、フィンテックの発祥について少し説明いたします。
フィンテックは、アメリカで発祥しました。
フィンテックの最初の動きは、1998年のPayPal(ペイパル)社がネット決済サービスをスタートしたことが始まりだとされています。
PayPal(ペイパル)は、イーロン・マスク(Elon Musk)が生みの親だと言われています。
ご存知かもしれませんが、イーロン・マスク氏はフィンテック革命を起こしたのち、現在、電気自動車分野(テスラモーターズ)と宇宙分野(スペースX)に革命を起こそうとしています。
フィンテック発達のきっかけとは?
PayPal社が新しい金融とITの融合を成長させつつある中、さらにフィンテック技術が発展した、最も大きなきっかけが2007年のリーマンショックだと言われています。
当時、アメリカのサブプライムローン(低収入者向け住宅ローン)の崩壊を発端とし、リーマンブラザーズも倒産するほどの影響力がありました。
サブプライムローンは日本の都市銀行のみならず、地方銀行に至るまでその債権を保有しており、日本国内にも大きなダメージを与えています。
リーマンショック後、世界の金融資産は4分の1にまで縮小したと言われています。
この金融危機を背景に、既存の金融システムに対する不満、不振が高まり、新しい金融システム、金融の仕組み、つまり、フィンテック技術への注目が高まり始めました。
そして、もう一つ、「iPhone」の存在も大きく影響したと言われています。
2007年に発売された「iPhone」が徐々に浸透し、個人が携帯しながら決済できるプラットフォームが確立してきたことも大きな発展の背景にもなりました。
このような背景が重なり、フィンテックという新しい金融の仕組みが、アメリカで浸透してきたと言われています。
フィンティック6つの金融機能
その後、フィンテックは2012年頃からアメリカで新しいサービスが次々とスタートしてきます。
現在、アメリカで急拡大しているフィンテックは以下、大きく分類して6つの金融機能と言われています。
以下、フィンテックの6つの金融機能です。
【フィンテック6つの金融機能】
決済機能
・キャッシュレスや振込決済手段としての機能
市場予知機能
・株式などの市場、取引、交換のプラットフォーム
・情報処理能力(速度、人工知能搭載、知能ロジック)
投資運用・助言機能
・業務外注(アルゴリズム、オープンソース、クラウド)
・投資家への助言、情報提供など
資本調達機能
・クラウドファンディングなど
預金・貸借金機能
・振込仲介(PtoP、レンディング、マーケットプレイス)
・一般ユーザー利便性向上など
保険機能
・保険内容の複雑化、高度化、多様化
・保険評価情報の高度化(ウェアブルPC、IoT)
このような機能部分での成長がみられ、主に新しいベンチャー企業がその仕組みを凌駕しつつあります。
戦々恐々する米大手金融機関
このフィンテックブームの到来に最も影響があるのが、既存の米大手金融機関。
既存の米大手金融機関は市場を奪われるのではないかと戦々恐々としています。
ただ、ウォール街に絶大な権力のある米大手金融機関もただ眺めてはいません。
対策を実施し始めています。
米大手金融機関はそもそも膨大な資金を抱えており、また自社グループなどでベンチャー投資なども行っているケースもあり、新技術情報・人脈も豊富であるため、フィンテック分野への影響力を徐々に高めています。
そもそも、フィンテック分野が金融業界であるが故、ベンチャー企業の買収、人材確保などに長けている米大手金融機関のほうが有利でもあります。
今、その傾向が出始めてきているとも言われています。
今後は米大手金融機関がフィンテック分野への影響力を高め、金融業界のフィンテック化を進めていく潮流が出てくる可能性はあります。
アメリカ注目フィンテックベンチャー企業
それでは、今、アメリカでは具体的にどのようなベンチャー企業が活躍しているのでしょうか。
今、アメリカの注目フィンテック企業をピックアップします。
以下、9社のアメリカフィンテックベンチャー企業です。
【アメリカ注目フィンテックベンチャー企業】
クラウドファンディング分野
購入型個人クラウドファンディングで、40%以上が資金集めに成功。
10万円~100万円が主流、約230カ国、約950万人から約2400億円の投資を実現しています。
ソーシャルレンディング分野
個人投資家と企業や個人とをウェブ上でマッチング。
ソーシャルレンディング世界最大手で、貸付残高は約6500億円。
個人向け融資(BtoC)分野
ECサイト事業者向け融資サービス。
ショップの売り上げや信用履歴、客レビュー、トラフィック、在庫量、客単価などを審査し、競合他社と比較しながら実施。
売掛金の前払い形式の融資も実施しています。
スマホ決済分野
個人メールアカウントを基準とした決済サービス。
クレジットカード決済手数料は3.6%+手数料。
EC事業者に多く利用されているサービスでユーザーは約2億人、売上約2.3兆円。
海外送金分野
手数料無料で海外送金ができるサービス。
クレジットカード、デビットカード、銀行口座に対応。
クレジットカードでビットコインが購入でき、この販売手数料がビジネスモデルです。
証券分野
2015年の「Benzinga Fintech Awards」にて最優秀賞を受賞。
一般個人向け投資助言サービス。
一部の機関投資家や超富裕層のみの優良投資案件への投資が可能となりました。
ロボアドバイザー・資産管理分野
投資管理・アドバイザリーサービス。
資産額、資産形成プランの提示、ポートフォリオの分析などを実施。
約90万人、約2000億円の資産に助言しています。
預金・資産運用分野
銀行口座を必要としない顧客向けプリペイドカードサービス。
サービス開始後約3か月で約60万口座、約300億円の預金を獲得しています。
以上です。
一概にフィンテックと言いましても多分野に渡っています。
パート2へ続く
著者:嵐
元東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト。
主に国内アーリーベンチャー企業に対し発掘、支援に従事。
多くのベンチャー企業経営者と面談、新技術や新サービス分野に強み。