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中堅中小企業のナラティブカンパニーの作り方参考事例

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ナラティブカンパニーの作り方事例①

企業の紹介

企業名:株式会社カヤック
事業内容:受託開発ソフトウェア業、日本的面白コンテンツ事業
資本金: 537百万円
HP:https://www.kayac.com/

事業の概要

カヤックは、1998年学生時代の友人3人、資本金3万3千円で、合資会社として設立しました。

設立当初より「何をするか」より「誰とするか」を重視していたため、テープ起こしなどからスタート。現在はweb制作・企画をメインとし、ゲーム開発、まちづくり事業なども手掛けています。

2002年現在も本社がある鎌倉市由比ガ浜に移転。2008年資本金は6000万円となり、2014年東証マザーズに上場しています。

ナラティブカンパニー化に取り組むきっかけ

「面白がって楽しく働く人が世の中に増えれば、世の中がより幸せになる」という創業時の想いから既にナラティブカンパニーとして出発しています。

そのため「何をするか」より「誰とするか」が行動指針となり、商品・サービスの視点ではなく、ステークホルダーとのwell-beingの共創物語の視点で様々な事業を展開し、拡大し続けています。

ナラティブカンパニーの具体的作り方

(1)「何をするか」より「誰とするか」で地域と株主を巻き込み、事業を拡大中

「誰とするか」の視点で地域住民を巻き込み、移住を促すマッチングサービスやコミュニティ通貨、地域を紹介する事業を展開しています。

また株主もカヤックをつくる仲間と位置づけ、株主紹介による社員の登用やブレインストーミング(以下ブレスト)への株主の参加など、カヤック共創物語の主役の一人として位置づけられています。

(2)面白給与システムで自利利他同時醸成

サイコロを振って給与を決めるサイコロ給で人事評価が無意味なことを示し、個々の従業員の「やってみよう因子」を醸成し、他の社員の長所を評価して給与を加算するスマイル給で、従業員間のチームワークを高めています。

(3)ブレストが企業文化を作り個々のwell-beingを高める

カヤックでは、ブレストを企業の文化を作るための最重要手法と位置付けています。

「他人のアイデアに乗っかる」というカヤック独自のブレスト手法で社員間のつながりを醸成し個々のwell-beingを高めながら、IT企業に不可欠なイノベーションを生み出し続ける脳のトレーニングをしています。

事例から学べる事

(1)「パーパス」  

「面白がって楽しく働く人が世の中に増えれば、世の中がより幸せになる」という創業時の想いや経営理念「つくる人を増やす」から、この企業は、well-beingマーケティングよりwell-being人事に重点を置いているのがわかります。

つまり、顧客のwell-being効果より従業員のwell-being効果で業績と企業価値を高めようとしているのです。

実際、社員の約半数がエンジニアで、「アイデアを実現する技術力」が強みといっています。

従業員との共創物語に重点を置いたパーパスもクリエイティブな業種業態の特色といえるでしょう。

(2) well-beingマーケティング

本社を置く鎌倉や株主との関係も密にするwell-beingマーケティングでステークホルダーの幸福度を高め、業績と企業価値を向上させています。

(3) well-being人事

クリエイティブな企業だけあって、各施策の第一義は「面白がって楽しく働く」という行動を評価する「やってみよう」因子になっていることが特徴です。

一方「ありがとう」因子の施策を常に併用し、洗練されたチームワークで創造力を向上させようという意図がうかがえます。

自利施策と利他施策をうまく組み合わせ事業を拡大していることがカヤックの強みといえます。

出典: 2021年中小企業白書事例2-1-5

「従業員だけでなく、株主や地域住民を含めた、自社の経営理念に共感する「仲間」を増やして活動の幅を広げる企業」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_1_2.html

ナラティブカンパニーの作り方事例②

企業の紹介

企業名: 株式会社ふらここ
事業内容:雛人形・五月人形を中心とする日本人形の製造販売
資本金:500万円
HP:https://www.furacoco.co.jp/

事業の概要

株式会社ふらここは、2008年老舗人形店の3代目であった現社長原英洋氏が東京都中央区で独立創業。

核家族化の流れを捉え、格式の高い伝統美で繊細な目鼻立ちが特徴であった雛人形、五月人形を、赤ちゃん顔のコンパクトサイズに変え盛況を得ています。

ナラティブカンパニー化に取り組むきっかけ

繁忙期に部署間負担の偏りが生じるにもかかわらず、偏りに見合う人事評価制度はなく、是正の見込みもなかったことから、約半数の社員が退職。

社内制度の重要性を痛感した社長は、「やりがいのある職場とはどんなものか」という問いを残った社員に投げかけ、集まった声をベースに社内制度の整備に取り掛かりました。

ナラティブカンパニーの具体的作り方

(1)全社員で作り上げた社内制度

アンケートの結果、評価制度に特に問題があることがわかったので、社員ひとり一人が理解できる文言と内容に刷新しました。

「職務行動評価」では社内コミュニケーションやチームワーク、職場・仕事への愛など5項目で職務行動を評価し、社員間のつながりを醸成。

「資格能力評価」では使命感行動やチャレンジ力など5項目で積極的な行動を促し、自己犠牲的な組織になることを回避しようとしています。

(2)社内制度整備過程の副産物で働きやすい職場に

業務負担の偏りと適正な評価のため全ての業務を棚卸。この過程で社員ひとり一人が会社の業務内容を把握、話し合いで社員間コミュニケーションが進展しました。

これを機に、閑散期の社員総会や業務のマニュアル化、ITを活用した情報共有と暗黙知の形式知化で、相互援助体制を確立し業務負担の平準化に成功。

社内制度刷新と相まって、助け合う企業文化が育っています。

事例から学べる事

(1)「パーパス」

顧客や従業員との共創物語といえるものが「ふらここの想い」に表されています。

「心ときめく、可愛らしさ、どこかわが子に似ているかも」「お子さまにぴったりの可愛いお顔を見つけてください」「お子さまがお人形を愛でる笑顔を、毎年、この先いつまでも、あたたかく包んでお祝いしましょう」といったものです。

さらにパーパスとしてふさわしい一文を中小企業白書の中で社長が述べています。

「ひな人形・五月人形を手にした子供たちが笑顔になる姿を見たい」

(2) well-beingマーケティング

ホームページで赤ちゃんや子供たちの笑顔の写真を効果的に使用するwell-beingマーケティングで、つながりや感謝を大事にする「ありがとう」因子の強い幼子を持つ親に訴求。

ふらここの想いとの共創物語を造りだし、幸福度を高め消費意欲を向上させることで、過去最高益を生み出しています。

(3) well-being人事

「ありがとう」(利他)因子を醸成する施策が多いのは、ナラティブカンパニー化に取り組むきっかけとなった「社員と向き合う」という課題を解決したい経営者の意思が反映されたものといえます。

経営者自身が変わらなければ何も変わらないという中小企業のデメリットを回避できたのです。

こうしたwell-being人事戦略の効果で従業員の幸福度が向上し、売上3倍、生産性向上の成果を獲得しています。

現在、「やってみよう」因子の施策は見受けられませんが、併用することで、各従業員の創造性が醸成され企画力や提案営業力が向上し、更なる業績効果が望めると考えます。

出典:2021年中小企業白書事例1-1-1

「正社員・パート社員を問わず、皆で助け合う組織風土を醸成し、日本の人形文化を継承していく企業」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b1_1_3.html

おわりに

第一章の事例は、クリエイティブ企業としてパーパス、マーケティングのターゲット、人事戦略とも「やってみよう」因子が第一義として構成されています。

クリエイティブ性を持続させるため、チームワークを強める「ありがとう」因子の施策を常に併用し、自利・利他のバランスをとっているナラティブカンパニーです。

第二章の事例は、逆に「ありがとう」因子で一貫しています。

会社の規模が小さかったため、「ありがとう」因子の人事施策が未整備で、社員の約半数が退職してしまいました。その反省から人事施策が刷新され、「ありがとう」因子で一貫した

ビジネスモデルを作り上げ、売上3倍、過去最高益という成果を獲得しています。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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