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中堅中小企業のリモートワークの活用事例・サービス業

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サービス業は、「モノ」をやり取りする小売業や製造業と違い、「コト」をビジネスの対象にしているという特性があります。

その特性を活かしたリモートワークの事例を中心に、取り組みのきっかけ・内容・今後の推進の方向性などをご紹介していきます。

リモートワーク・サービス業の現状と課題

2020年4月10日~12日に行われた、パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、サービス業でのテレワーク(リモートワーク)の実施率は、全業界平均27.9%に対して、学術研究・専門・技術サービス業 44.5%、宿泊業・飲食サービス業14.5 %、生活関連サービス業・娯楽業24.4%、教育・学習支援業 23.9%、医療・介護・福祉 5.1%、その他のサービス業31.7%となっています。

対面を伴うサービス業においては、平均に満たない実施率ですが、学術研究・専門・技術サービス業などのコンサルティングやコンテンツサービス関連に関しては平均を上回る実施率となっています。

【参考】パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

https://rc.persol-group.co.jp/news/files/news-data.pdf

サービス業のリモートワーク導入事例

【明豊ファシリティワークス株式会社の事例】

会社プロフィール

東京都に立地する、従業員数226人の建設サービス業です。オフィスビル、校舎・駅舎、医療施設、研究施設、工場その他各種施設建設プロジェクトにおける発注者の支援事業(コンストラクション・マネジメントサービス)を行っています。

リモートワーク導入のきっかけ

同社は、建築物の建設における、発注者側の利益を守ることを主業務にしています。そのため、顧客の信頼を得ることが最も重要なテーマになります。

そこで、テレワーク導入するテーマを、「可視化による信頼関係構築」「生産性向上」「管理会計による先見性向上」と定め、「競争優位性を強化する手段」として、全社員を対象としたテレワーク(主としてペーパーレスの徹底とモバイル勤務)を導入しました。

また、会社の基本的な考え方として、社員には長く会社で働いてほしいということがあり、そのために働きやすいこと、働きたいと思う気持ちを持ってもらうことに重点にしています。

リモートワーク業務内容

同社ではほぼ全員の全業務がリモートワークの対象となっています。社員は勤務場所を問わないテレワークの仕組みの中で普段から働いているので、在宅勤務固有の報告等は無く、1時間程度なら本人の判断で自由に在宅勤務可能とし、例えば子供の看病等で在宅勤務を希望する場合には、口頭で上司の承認を得るだけで在宅勤務が可能になるという、フレキシブルなルールで運用しています。

同社の業務のほとんどはプロジェクトチームで進めていく形をとっているので、社員の業績評価にプロジェクト関係者も参加しているのが特徴です。

また、社員個人の工数管理システムが導入されており、プロジェクト毎の各人の負荷時間と行動内容がわかるデータが社員に公開されています。つまり、業務の「見える化」に成功していると言えます。

さらに、在宅勤務ではありませんが、産前産後休暇中、育児休暇中の社員が安心できるよう、希望者に対して、勤務中と同様に自宅から会社の情報にアクセスすることが出来る環境を提供しています。

今後のリモートワーク推進

同社の取り組みの特徴は、リモートワークを戦略的に活用している点にあります。さらに、その運用方法も非常にフレキシブルで、企業の目標と従業員のニーズが一致した、先進的な事例であると言えます。

同社では、優秀な人材が場所を問わず高いパフォーマンスで働けることや、妊娠、出産、育児、介護、家族の病気等への対応が重要であると考えています。

そのため、同社では、同社で働き続けたいと社員が思えるテレワークの仕組みを、今後も社員とともに考え、より良い仕組みにしていきたいと考えています。

【参考】総務省テレワーク情報サイト サービス業 テレワーク先駆者百選事例(総務省H27)テレワーク人口実態調査(国土交通省H27)明豊ファシリティワークス株式会社

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/search-case/pdf/15-09.pdf

【参考】総務省テレワーク情報サイト サービス業 テレワーク人口実態調査(国土交通省H27)明豊ファシリティワークス株式会社

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/search-case/pdf/10-32.pdf

【株式会社エフアンドエムの事例】

会社プロフィール

同社は、大阪府に立地する従業員数394人の中堅中小企業向けコンサルティングサービスを展開している企業です。事業内容としては、中堅中小企業向け経営力強化支援サービス、個人事業主及び小規模企業向け会計サービス、中堅中小企業向け管理部門支援サービス、税理士・社労士等士業向け経営支援サービスなどを提供しています。

リモートワーク導入のきっかけ

家族の転勤、育児、介護などのライフイベント発生による離職の防止、新たな雇用の創出を目的として、テレワークの導入を開始しています。

さらに、テレワークを通じた社員の業務効率化や生産性向上ならびに顧客満足向上にも好影響があると考え、着手しました。

リモートワーク業務内容

同社のリモートワークでは、顧客管理システムやオンラインストレージサービスを活用しているため、就業場所を問わない勤務を可能にしています。

また、インターネット電話を常時つなぐことで、会社と社員がお互いの勤務状況を把握することも可能になっています。

また、無料もしくは安価な市販のITツールを活用してテレワークを実現しています。遠隔地の顧客や社員との打ち合わせはスカイプなどを活用しています。

顧客との資料のやりとりはオンラインストレージサービスを活用。顧客管理システムで情報を一元管理し、タブレット端末等とアクセス可能にすることで場所を問わずに事務作業ができる環境を創出しています。

同社のリモートワークの更なる効果として、本業に活用しているだけでなく、テレワークが困難と考えている顧客企業に同社のテレワークを体験してもらうことで、顧客企業にもテレワークが普及し始めており、同社に対する顧客の信頼度が増している点にあります。

今後のリモートワーク推進

同社では、すでに社内にリモートワークが定着しています。また、同社のリモートワークは、自社が成功することで顧客にもその好影響が波及しています。

そのことで、既存メニューの労務管理システム等との相乗効果が生まれ、営業活動により高いパフォーマンスが生まれつつあるようです。

【参考】総務省テレワーク情報サイト サービス業 テレワーク先駆者百選(2017年度)

株式会社エフアンドエム

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/search-case/pdf/17-10.pdf

【参考】労務SEARCH by オフィスステーション 株式会社エフアンドエム

https://romsearch.officestation.jp/jinjiroumu/8934

サービス業のリモートワークまとめ

多くの産業において、テレワークの対象は、経理・総務などの顧客との対面を必須としないバックオフィス系の業務が多くみられましたが、サービス業のうち、直接接客を必須としない業種においては、売上を作り出すメイン業務にも活用できる可能性があります。

明豊ファシリティワークス株式会社の場合は、リモートワークを経営戦略の要と位置づけていますし、株式会社エフアンドエムは、自社の取り組み自体が、顧客の強い関心を生み、自社サービスメニューにまで転用できています。

これらの事例は、テレワークが「守り」だけでなく「攻め」の経営ツールとしても有効であるということを、私たち中堅中小企業に示唆してくれています。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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