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台湾の未来(前編)

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こんにちは!栗原誠一郎です。

中華民国108年

日本の「令和元年」のように、台湾にも独自の年号があります。それが「中華民国〇年」(もしくは単に「民国〇年」というものです。

実際に台湾ではこの年号が普通に使われていて、コンビニのレシートでも西暦ではなく中華民国〇年と記載されています。

中華民国が成立した1912年が紀元(元年)となり、西暦2019年は中華民国108年にあたります。

中華民国が成立した時の首都は中国本土の南京で、2000年に台湾独自路線を追求する民進党政権が樹立するまでは、中華民国の首都は南京(台北は臨時首都)と台湾の学校で使われている教科書にも書かれていました。

台湾の人々は毎日この年号を見ているわけですから、中華民国こそが「中国」を代表する正統政府であるという自分達のアイデンティティーを否が応でも意識せざるをえないのです。

 

両岸貿易

一方で、台湾と中国本土(中華人民共和国)は経済的には既に強く結びついています。

台湾の輸出金額全体に占める中国向け輸出の割合は2018年28.8%、また輸入金額全体に占める中国からの輸入の割合は18.8%と、輸出入ともに中国が最も大きな構成比を占めているのです。(JETRO資料参照)

また、台湾政府が中国への投資を解禁した1991年から2018年までに台湾が行った対外投資の累計件数と金額にしめる、対中国投資の比率は件数で74%、金額で57%にもなります。(台湾経済部投資審議委員会資料参照

台湾から中国への輸出は資本財や中間財が中心ですが、これはシャープを買収した鴻海のように台湾企業が中国に工場を建設し、中国の安い労働力を活用して製品を生産、そして中国からアメリカに向けて輸出を行うという構図によるものです。

上記の統計値はこの構図で台湾と中国の経済的関係が深まっていったことを表している訳です。

ちなみに、台湾財政部の統計資料を見ると、アジアへの輸出入額全体やその中での香港や日本、アセアン各国との輸出入額のデータは載っていますが、上述したように一番の輸出入相手である中国のデータが記述されていません。(輸出入額全体のデータにはちゃんと中国のデータが含まれているにも関わらずです!)

中国への輸出入データは、大陸委員会という政府(行政院)機関で把握・管理しています。

そのデータは「両岸貿易統計」として台湾・中国間の輸出入データがまとめられています。そこでは中国のことは中華人民共和国(People’s Republic of China)とは記述されていません。中国大陸(Mainland China)との取引として記述されている訳です。

政治的には互いを「国」として認めていない一方で、経済交流はどんどん拡大する中で、現実的な諸手続や管理を行うために苦肉の策として作ったのが、この大陸委員会なのです。

 

蔡英文(さいえいぶん)政権と台中関係

台北で現地の方と話をしていると、「景気は良くない。今の総統である蔡英文が台湾の独立性を主張しすぎて中国との関係が悪くなっているからだ」との声をよく聞きました。

実際に台湾の実質GDP成長率の推移を見てみると、確かに2017年は3.08%だった成長率は、2018年は2.63%、直近(2019/5/24)の予測では2019年2.19%と徐々に成長率が低下していることは確かなようです。
蔡政権が誕生したのは2016年5月ですから、蔡政権が誕生して以降、景気は徐々に悪くなっていると言われればそうでしょう。

上述したように中国との貿易自体は輸出入ともに増加していますが、一方で、中国から台湾への観光客は2015年の334万人から2018年は191万人まで減少しています。

しかし、もともと蔡総統は、台中関係については現状維持派で、独立志向でもなければ統一志向でもなく、そのあいまいさが、年金改革などの不人気施策の断行とともに、蔡政権の支持率の低さの原因でした。

逆に最近は、中国の習近平国家主席が1月の演説で「1国2制度」による台湾統一を強調し、蔡氏がこれに繰り返し反論したことがきっかけになり、支持率が回復してきています。

 

郭台銘、台湾総統選へ立候補

2019年4月、シャープを買収した鴻海の創業者、郭台銘(カクタイメイ:テリーゴウ)が、国民党から台湾総統選へ立候補することを表明しました。

鴻海は先日の深圳に関する記事でも書いたように、中国に対して積極的な投資を行うことによって、今の世界的地位を確立しました。当然、中国との関係も深く、もし、郭台銘が総統になれば、親中的施策を行うことが予想されます。

でも、彼が立候補する国民党といえば、台湾総統を長く務めた李登輝が率いていた政党であり、私の記憶では、中国から相当敵対視されていた記憶があります。いつから国民党は親中政党になったのでしょうか?

 

そもそも論

前述した中国の習近平の演説の中で、習近平は中華民族の偉大なる復興のためには、台湾の統一が不可欠だと主張しています。しかし、そもそも台湾とは、「中華民族」の歴史の中でどのような位置づけがあったのでしょうか?

そして、歴代の台湾総統は中国本土とどのように対峙してきたのでしょうか?

次回の記事では、台湾の歴史をもう少し詳しく振り返り、その流れの中で台湾の未来を考えてみたいと思います。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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