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中堅中小企業の越境EC対応事例

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Shopifyで実店舗とECサイトを一元管理(オムニチャネル化)している事例

企業の紹介

企業名:CSL(運営会社『ブルーミング中西株式会社』)
事業内容:繊維製品企画販売
資本金:1億円
HP:https://classics-the-small-luxury.com/

事業の概要

CSLは、ハンカチーフやテーブルクロス、ホテルリネン等の布製品を扱うブルーミング中西のオリジナルブランドです。現在は六本木ヒルズ本店をはじめ実店舗を都内と九州で5店展開中。2011年にオンラインショップをスタートしました。

CSLで扱うハンカチーフは品質とデザイン性の高さが特徴で、顧客の希望や用途を丁寧にうかがいながら、1枚を選んでいく接客スタイルです。

セミオーダー式のオリジナルハンカチが好評で、多くのリピーターを獲得しています。好評のオリジナル刺繍はオンラインショップからもオーダー可能です。

Shopify導入のきっかけ

導入前は、実店舗5店とオンラインショッピングが一元管理できる環境になかったため、顧客情報と在庫情報がそれぞれの店舗に分散していました。

顧客層を明確に把握できていなかったため、丁寧な接客スタイルのフロント機能とバックオフィス機能に齟齬がありました。

そこで、ShopifyPOSを導入して、フロント機能とバックオフィス機能を一元管理し、顧客サービスの向上と在庫管理の効率化を期待して導入を決定しました。

Shopifyによる越境EC化のしやすさも理由の一つになっています。

Shopifyの具体的な活用方法

(1) Shopify契約内容とコスト
実店舗5店とオンラインショップそれぞれの店員がアカウントを持てるよう月額299ドル(約3万9000円)のプレミアムプランを導入。

さらに、業務効率化のためいくつかのアプリを活用しています。
・在庫管理効率化アプリ「Stocky」(無料)
・配送業務効率化アプリ「ship&co」(従量課金制又は月額割引プラン)
・ユーザーレビューアプリ「Judge.me」(無料プラン又は月15ドル)
などサブスクと合わせ月額1万円程度のランニングコスト。

但しこれにShopify公式エキスパート企業のコンサルティング料がプラスされます。

(2) Shopify導入プロセス
実店舗1店でトライアル期間を設け、Shopify公式エキスパート企業と共に現場の課題を修正しながら導入。半年ほどで全店舗に導入完了しました。

(3) Shopify導入の効果
①接客の丁寧化・顧客利便性向上
購入履歴が会話のきっかけになり、「違う店舗でオーダーした刺繍と同じ内容にしたい」との顧客要望への迅速対応が可能になりました。
顧客情報メモ欄の「要領収証」等の付加情報で接客のカスタイマイズ性も向上しています。

②在庫管理の効率化
実店舗とオンラインショップの在庫が全店舗で把握可能になり、他店舗在庫の取り寄せが円滑になっています。オンラインショップ購入品の実店舗受取サービスも開始しました。

事例から学べる事

Shopifyのオムニチャネル化と一元管理機能の優秀さがわかる事例です。サイトも綺麗でShopifyのデザイン性の高さもうかがえます。

Shopify公式エキスパートとの関係をみるに、本格的に越境EC化する際にShopifyの機能とアプリを使いこなせるかの心配もいらないように思います。

もっとも、こうした関係が全ての導入企業で実現するわけではありません。また、コンサルティング料も含め収益化できるかも課題でしょう。

出典:Shopify ブログ
https://www.shopify.com/jp/blog/success-story-classics-the-small-luxury

国内ECサイトのままインバウンド需要を越境ECへ引き上げた事例

企業の紹介

企業名:タビオ株式会社
事業内容:靴下の企画・製造・卸・小売・フランチャイズ チェーン(靴下屋)の展開・直営店(靴下屋・ショセット・Tabio・TabioMEN)の展開
資本金:414,789,000円
HP: https://tabio.com/jp/brand/tabio/
https://tabio.com/jp/corporate/

事業の概要

1968年「靴下業界の良心たれ」との創業者の想いと共に創業しました。価格優先の海外生産の靴下が大半の中、創業の想いから日本の職人が1つひとつ丁寧に編み立てたMade inJapanの靴下を世界に届けています。

専門店「靴下屋」を直営とFCで展開しながら、全世界をターゲットにしたプレミアムブランド「Tabio」や紳士靴下専門「TabioMEN」、スポーツ靴下専門「Tabiosports」等8つのブランドを展開中。

2002年イギリスの高級百貨店ハロッズに出店後、フランス、中国にも出店。Eコマース分野も自社サイト「Tabio」の他、楽天市場やAmazonなど国内モールにも出店中です。

「Buyee Connect」導入のきっかけ

アジア人を中心としたインバウンド需要を取り込んでいましたが、コロナ禍で訪日が見込めなくなったため、その需要をEコマースに引き上げたいとの想いが越境ECに取り組むきっかけでした。

同社は英仏中に実店舗を展開し、自社ECサイトの他、国内大手ECモールにも出店中で、越境ECでも海外モールへの出品、もしくは自社サイトそのものを越境EC化することが当然選択肢にあったはずです。

しかし選択した形態は国内自社ECサイトに海外発送代行サービスを加えるものでした。

この形態を選んだ理由は、
①海外顧客の負担の少なさと利便性
②導入・維持コストの安さ
③越境EC特有トラブルが回避できることでした。

同社が選択したサービスは「Buyee Connect」です。

「Buyee Connect」は海外配送代行サービス「Buyee」を国内ECサイトにつなげるサービスです。「Buyee Connect」は導入費・月額費・販売手数料0円。海外配送はBuyee が行い、海外顧客との決済もBuyee が行います。

Buyeeの収益は海外ユーザーが1注文あたり支払う手数料300円です。そのため、導入・維持コストが安く(実際は海外顧客データ取得とその分析ができるダッシュボード利用費が月5000円)、越境EC特有トラブルが回避できるのです。

この形態を選択した最大の理由は海外顧客の負担の少なさと利便性です。

「Buyee」は以下のサービスを海外顧客に提供しています。
・世界約120カ国/地域に配送対応。
・海外顧客が利用できる配送方法は、合計11種類。料金の安い船便からAIR(航空便)、SAL(エコノミー便)、スピード重視のEMS、世界最大級の国際輸送物流DHL、アジア向け格安配送のECMSまでユーザーの予算と時間的余裕に合わせ選択できるラインナップ。

・海外顧客が利用できる決済は、主要クレジットカードはもちろん、中国決済の柱「Alipay、銀聯」、世界最大規模のオンライン決済サービス「PayPal」も使えます。

・海外向け商品購入方法ポップアップ及びカスタマサポートは10言語対応。(日本語・繁体字・簡体字・英語・インドネシア語・タイ語・韓国語・スペイン語・ドイツ語・ロシア語)

仮にShopifyで自社サイトを越境EC化した場合、大企業でない限りこれほどのサービス環境は構築できないでしょう。

「Buyee Connect」の具体的な活用方法

「Buyee Connect」の仕組は、以下の通りです。

詳しくは「Buyee Connect」のサイトをご覧ください。

事例から学べる事

この事例では「国内サイト+海外配送代行」の形態を紹介しました。

全世界をターゲットにしたブランドを立ち上げ海外実店舗を多く運営している企業がこうした形態を選んだ意味は大きいと思います。当然自社サイトの越境EC化も検討しているからです。

「海外顧客の負担の少なさと利便性」の視点ではこの形態が最善と考えているようです。実際、海外顧客視点でみると翻訳・配送・決済サービスは「自社サイト越境EC化」より優れているように思います。

経営資源が豊かな大企業であれば十分な人員と予算を提供できるのでShopifyで「自社サイト越境EC化」した方がカスタイマイズされたより利便性の高いものができるかもしれません。

しかし中堅中小企業では難しいように思います。

おわりに

この記事では「国内サイト+海外配送代行」の形態を紹介しました。サイト自体の越境EC化に取り組んだ事例はShopifyブログにたくさん紹介されていますので、そちらをお読み下さい。そして実際のサイトもご覧ください。

Shopifyで作られたサイトは確かにきれいですが、海外消費者の視点でみると必ずしも良いものとは言えないサイトも見受けられます。

しかし第一章の事例で紹介したようにShopifyのオムニチャネルと一元管理機能は大変優れています。

従って、「自社サイト越境EC化」と「国内サイト+海外配送代行」のどちらを選択すべきかは、各企業の自社サイトの役割により異なるでしょう。

今回の記事がその検討の機会になれば幸いです。

著者:maru
2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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