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顧客管理データの活用方法・業種別事例編

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これまで、顧客管理の考え方や、データ分析の基礎、必要な機器構成などを見てきましたが、今回は顧客管理の総括編として、ステップを踏んだ顧客管理データの活用方法や、業種業態別の顧客管理の特性、活用方法の事例として、小売業・理美容業・飲食業の事例を見ていきます。

 

顧客管理データを活用する上での全般的なポイント

ステップを踏んで活用する

顧客データの活用は自社の能力、必要性を勘案した上で、利用方法を明確にし、ステップを踏んで実施することが重要です。そのステップとしては以下の段階で進める事をお勧めします。

 

【ステップ1 名簿データ活用】

会員の名簿データ(住所・生年月日・性別等)を活用してセール情報や新商品情報を発信したり、誕生日のクーポンをお送りしたりするなどの活用方法です。

【ステップ2 ご利用データ活用】

ご利用データと顧客コードが一体的にデータとして入手できれば、顧客ごとの利用動向分析が可能になります。

利用する機器としてはPOSデータが一般的ですが、お買上げ伝票データと顧客コードをExcelなどに入力して処理することも可能です。

具体的な利用方法としては、「デシル分析」です。一定期間のご利用回数やご利用金額順に顧客を10等分にランク付けし、特典やサービスを提供します。

実はこのレベルまで実施できている企業は意外に少ないものです。

ここまで体制として出来ていれば、顧客に対する販売促進としては、一定の効果が得られます。

【ステップ3 RFM分析活用】

デシル分析で一定の効果が表れ、運用も順調になってきたら、次にRFM分析を活用しましょう。

RFM分析では、最終来店日・来店回数・利用金額によって顧客の現在のステージが明確になり、顧客への最適なアプローチが可能になります。

【ステップ4 商品計画への活用】

顧客の利用データには、POSデータからの単品購入データが含まれています。そのため、いつ、誰が、どの商品を、いくらで購入したかがわかります。

このことは、顧客の動向分析だけでなく、商品構成や価格政策に役立ちます。ここまで活用できている企業はあまりありませんが、貴重な経営資料になります。

 

ディスカウントの代用ではない

顧客管理の活用手法として、あまりお勧めできないのが「○倍ポイント」という手法です。一種のディスカウントですが、大企業ならまだしも、中小企業にとっては大きな資金負担です。

この手法は、「○曜日はポイント5倍」とか、「毎月○のつく日はポイント10倍」というふうに、どんどんエスカレートしていきます。

さらに、会員カードを持っていれば、全ての顧客にディスカウントするわけですから、本来の、「優良顧客に特典を提供する」という主旨から外れ、特売品をポイントで購入するだけの「流動客」を生むだけで、企業に実質的な収益をもたらせてくれません。

 

パレートの原則で考える

顧客管理は、最初から全ての分析や施策を全ての顧客に実施することは、不可能であり無駄です。

そもそも、その企業や店舗を利用する顧客のうち、上位23割の顧客の利用額で、全体の8割の売上をいただいていると言われています。

パレートの原則とか、2:8の原則などと言われている法則です。自社の運用能力も勘案した上で、優良顧客に対して、重要度の高い施策を打っていくという考え方で進めていきましょう。

 

小売業での活用方法

小売業顧客管理の特性

いわゆるモノ的な商品は、顧客の購買行動別に、以下の3パターンに分かれます。そのため、自社の商品特性に合わせた活用方法が重要です。

【最寄品】・・・住んでいる場所の近くで、手間をかけずに購入したい商品です。日常の食料品や日用雑貨などがあります。

【買回品】・・・洋服や身の回り品等、いくつかの店舗で比較品しながら購入する商品です。

【専門品】・・・宝飾品やカメラなど、じっくり時間をかけて購入する高額品です。

 

小売業での活用事例

最寄品店では、購入頻度が高いため、日々の買い物でメリットを感じるような顧客管理が重要です。

主に、会員向けに購入額に応じた値引きなどの価格プロモーションや、特売情報の提供、宅配サービスなどの買い物の手間を省くサービスも有効です。

買回品店では、顧客ごとにサイズや商品に対する好みが分かれるため、それらの情報の登録が重要です。

従来それらの情報は特定の販売員のノウハウになっていましたが、売れっ子販売員の退職で業績が左右されてはいけません。顧客の好みをデータで共有化し、提案する仕組みが有効です。

専門品店では、顧客数が他の商品に比べて少なく、顧客の好みが深いことが特徴です。

そのため、顧客の好みのメーカーやデザインを登録しておくことと、購買履歴を見ながら、新商品の情報を提供したり、活用方法を提案したりする、コンサルティングセールスが有効になります。

 

理容・美容業での活用方法

理容・美容業顧客管理の特性

理容と美容は、顧客ニーズが真逆です。理容は「いつもの髪型を手早く」というニーズがあり、美容は「自分にあった髪型を提案して欲しい」というニーズであり、全く別の業態ともいえます。

 

理容・美容業での活用事例

どちらも固定客確保が大前提の業界です。理容は、スタンプカードなどによって、一定回数溜まったら1回分カット代無料にするなどの価格メリットを訴求すると良いでしょう。

美容は特定の従業員につく特性があるため、履歴の記録を使ったヘアスタイルの提案やインターネットからの予約機能が必要になります。

 

飲食業での活用方法

飲食業顧客管理の特性

一定単価以上の、ファストフードでない店舗で有効です。低単価業態では、顧客の高回転が必要になるため、レジでのポイントカードなどのやり取りは、回転率を下げて売上を低下させる要因があるためです。

しかし、ある程度の高単価の店舗でも、顧客の離脱が多いのが特徴的な業態です。タイミング捉えたアプローチが大切です。

 

飲食業での活用事例

飲食業への来店理由は、誕生日や結婚記念日などの記念日需要や、忘年会や新年会などの季節に応じた需要などがあります。

つまり、需要時期が予測できる業態ですので、会員制度に入会する際の申込書に記念日の記入をしてもらうことが重要です。

さらに、大人数で忘年会などでは、幹事の役割は重要です。なぜなら、店舗選択の決定権を持っているからです。

幹事役の会員には飲食代金のキャッシュバック等の特典も有効な販売促進策と言えます。

 

まとめ

顧客管理の総括編として、ステップを踏んだ顧客管理データの活用方法や、業種業態別の顧客管理の特性、活用方法を、具体例を交えてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

顧客管理は、ステップごとに進めていくことで、初期のステップであってもかなりの効果があることをご理解いただけたのではないでしょうか?

また、顧客管理のポイントは、一律の考え方ではなく、業種業態毎にも特徴があることが分かっていただけたと思います。

売上や利益を生んでいるのは、何と言ってもお客様です。お客様と向き合い、お客様の状態に応じて適切にアプローチすることで社業を着実に発展させていきましょう。

 

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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