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G7は国際秩序形成の担い手となれるか

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こんにちは!栗原誠一郎です。

結束を失うG7

カナダで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)は、アメリカ対その他という対決構図になり、トランプ大統領は米朝首脳会議準備という名目で閉幕を待たずにシンガポールに向かいました。

かろうじて首脳宣言が採択されたものの、トランプ大統領がカナダのトルドー首相の発言に立腹、一転して宣言を承認しないと発言(ツイート)するなど、G7としての結束を示すことはできませんでしたね。

一方、中国、ロシア、インドなどが8カ国でつくる上海協力機構(SCO)首脳会議がG7と前後して開催され、中国の習主席は「SCOは今や国際秩序を補完する重要な力だ」と語りました。

G7誕生の経緯

第二次世界大戦で本土が戦場にならなかったアメリカは戦後一貫して輸出大国でしたが、各国の復興を受け、貿易黒字は減少、1971年に貿易赤字国に転落しました。

その中で突如、金とドルの交換を一時停止、10%の輸入課徴金の導入などを打ち出したのが、いわゆるニクソン・ショックで、世界経済は大混乱しました。

もちろんアメリカは日本も含め各国と貿易赤字解消に向けた交渉を行っていましたが、各国の対応は進まず、業を煮やしたアメリカが自国の利益のために国際協調を無視して政策を実行したという構図です。

10%の輸入課徴金はその後の国際会議(スミソニアン協定)で廃止が決まりますが、アメリカという大国の影響力を改めて各国は認識した訳です。

一方、そのような中、1973年に第四次中東戦争を契機とした、オイルショックが発生します。

石油に依存している先進国は多大な影響を受け、先進国が結束して対応することが必要という機運が生まれました。

そこで、世界経済に対する影響力が大きい先進国がお互いの利害調整を行いつつ、結束して世界の秩序をつくる(政策協調を図る)ために1975年に開催されたのがG6(米,英,仏,独,日,伊の6カ国、カナダが翌年から参加しG7となる)です。

G7の変遷

G7の開催前には各国の財務大臣が集まって会議が行われますが、もともとG7は1973年に米、英、仏、独、日の5カ国の財務大臣が集まった非公式会議から発展する形で生まれたものです。したがって、世界経済が主要なテーマでした。

しかし、資本主義、民主主義という価値観を共有する国々の集まりであり、それが結束の前提である以上、政治色抜きという訳にはいきません。

冷戦後の1991年以降部分的にG7に参加し、2003年からはG7全日程に参加していたロシア(旧ソ連)は、2014年クリミア半島編入などを理由に参加停止となりました。

G7が国際秩序をつくる存在であるために必要なこと

今回、トランプ大統領はロシアをG7に参加させるべきだと言いだして、他の首脳を更に困惑させていました。

これは保護主義政策を次々と発動してG7の中では圧力を掛けられる側のトランプ大統領が、G7の議論が貿易に集中しないようにするために議題に挙げたという感はあります。

しかし、そもそもG7のメリットは、国連の会議とは異なり、世界経済に影響力のある主要国の首脳が、制約なく話し合い、合意を見出し、国際秩序をつくるという仕組みそのものです。

各国の利害対立があるのは前提で、だからこそそれを調整するためにG7があります。今回のG7では合意が見出しにくかったことだけで、特に失望する必要もないと思います。

一方で、国際秩序をつくっていくという点では、参加国が結束できるテーマが必要です。現在のトランプ大統領がG7に意義を見出せるとすれば、対中国ということになるでしょう。

先述したように、中国は自らが新しい国際秩序をつくる主体となることを望んでいます。
トランプ大統領にとって、それは許容できないでしょう。

であれば、今は中国に接近しつつあるロシアを再びG7に引き入れることは、充分意味のある選択だと思います。また、インドを参加させることも対中国ということでは考えられます。

G7が本来もつ柔軟性を発揮していかなければ、SCOに国際秩序形成の主役を奪われる日も遠くないかもしれませんね。

 

さて、皆さんはどう思いますか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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