IoTパート2
前回「IoTパート1」の続きとなります。
IoTの活用事例
では、実際、どのようにIoTが活用されているのか、ご紹介させていただきます。
説明してきた通り、IoTは様々な分野での活用が見込まれています。
パート1で区分けした3分野別に分けて、具体的な活用事例を見てみましょう。
事業、産業活動
農業!環境データを収集・解析「e-kakashi」
e-kakashiは農業に活用できるサービスです。
土壌水分や温度、さらに湿度などの環境データを収集・解析し、データ蓄積。
収集したデータはスマートフォンやPC、タブレットなどで確認できます。
また農作物毎に異なる栽培方法や管理、技術、ノウハウなどをそれぞれ別に集積できることも強みとなっています。
レコメンド!自動販売機「Suica」
街などでよく見掛ける、Suicaやスマートフォンで購入できる機能を備えた自動販売機にもIoTが活躍しています。
購入者の属性を読み取り、その人に合った商品をおすすめすることが可能。
タクシー配車サービス
スマートフォンのGPS機能を活用し、タクシー配車サービスを展開。
顧客のGPSから位置や場所を読み取り、その場所に一番近い地域にいるタクシーが対応するというサービスです。
昨今は人工知能を活用し、過去の乗車位置、時間を検証し、顧客利用の多い時間帯、地域に車両を向けるという仕組みも登場しています。
自動車保険「あいおいニッセイ同和損害保険」
あいおいニッセイ同和損害保険では走行距離などをリアルタイムで集計し、契約者と走行距離に合わせて毎月の保険料を設定するという自動車保険も開発されています。
レコメンド!航空会社による搭乗履歴データ
インターネットの予約やデジタルチケットで飛行機や新幹線への搭乗が可能になり、航空会社は、いつ誰がどの便に乗ったのか、特定できるようになりました。
この情報を基に、旅行やツアーを個人にレコメンドする機能も進化しています。
ドローン!測量サービス「SKYCATCH」
ドローンを使って建設現場の測量を行うサービス。
昔は長時間かけていた測量が30分程度で出来るようになり、測量したデータを自動で3Dデータにしてくれるという優れたサービスです。
ドローンもネット化されたマルチコプターなのでIoTの中の一つです。
省エネ!ビルの管理システム「竹中工務店」
竹中工務店ではセンサーでリアルタイム制御してビルを管理しています。
省エネ効果や快適性の向上が見込まれ、更に防犯や防災でも、よりスムーズに検知や察知ができると期待されています。
エコ走行!配送車「UPS」
配送業者の最大手UPSは自社の車両にセンサーを設置、車の停車回数や走行時間数、エンジン状態などをモニタリングしています。
IoTを使って自社の車両データを集め、より効率的且つエコな走行を目指しています。
日常生活、人間的活動
猫用の自動給餌機「CATFi」
本体にはキャットフードと水を貯えるタンクがあり、自動的に猫にご飯と水を与えます。
このCATFiが斬新なのは、猫の顔を認証する事でそれぞれの猫に合った適切な量のご飯と水を与える事が出来る優れものです。
スマートロック「フォトシンス」「Akerun」「Qrio」
スマートロックとは、スマホで開ける鍵のことです。鍵を落としても安心です。
また、民泊などの施設で解錠履歴を把握する方法として進められています。
ポットで安否確認!「象印」
象印では、一人暮らしをしている高齢者に対し、お茶などを飲む際にポットを使用すると、離れた場所にいる家族に安否が確認できるサービスを展開しています。
体調管理「オムロンとNTT」
オムロンとNTTが共同開始したサービス。
ユーザーの体温などをデータとして送信することで、最適な心身のケア方法や、食生活のアドバイスなどを提供するサービスも展開しています。
服薬管理「日本オラクル」
日本オラクルでは、センサー付きの薬の開発を進めています。
センサー付きの薬は体内で溶解するようになっており、その溶解する際の細かい電波をキャッチし、服薬した方の体調や摂取したその状態のデータを集積する仕組みです。
排便予知デバイス「D Freeeとサイマックス」
「D Freeeとサイマックス」は介護の現場での排便予知デバイスの開発を進めています。
電動車いすの走行距離やバッテリー残量データ「WHILL」
使用している電動車いすを遠隔から走行距離やバッテリー残量が確認できます。
また故障などを検知した際にWHILLから修理のご案内が届きます。
社会、公共活動
鉄道やバスの到着案内
鉄道やバス各社は、車両に通信機器を設置して、車両の運航状況をリアルタイムで案内できるサービスを展開しています。
交通状況把握「富士通」
富士通は、車に設置した電子機器からデータを収集し、その走行状況から、交通状況を把握するシステムを開発。
ブレーキの使用頻度や速度などを検証し、渋滞している道や混みやすい道路などが分析できます。
利用者の位置情報データ「Google」
Googleは、利用者の位置情報を基に東日本大震災の際に、道路の通行状況などを表したマップを公開。
通行できる道路、できない道路、孤立している地域がないかなどの確認に役立ちました。
省電力化!スマートメーター
スマートメーターはセンサーと通信機能付きの電力計を指します。
このスマートメータ―を使う事で電力の使用状況をリアルタイムで解析できるようになります。
その結果を受け、自動的に最適な配電ルートを調節し、電力の安定供給や省エネ化が実現します。
砂災害察知サービス「NEC」
斜面の小さな振動から地すべりや、土石流などの災害リスクを察知し、発生前に警告するシステムです。
斜面の振動をセンサーで感知し、つながったアンテナを通じてデータを無線で集積します。
土砂の重量や粘度、地中の水圧などから危険度を割り出す事が可能で、危険水準に達するとアラームが鳴る仕組みです。
以上です。
上記活用例はごく一部にすぎません。
IoTの市場規模
様々な分野での活用が見込まれるIoT。
これから、あらゆる分野でモノとインターネットの融合が本格化されます。
市場規模も飛躍的に拡大が見込まれています。
2016年のIoT市場規模はすでに、世界市場194兆円、日本市場11.1兆円。
今後さらに、年平均5.4%の増加見通しとなっており、2030年には世界で404.4兆円、日本で19.7兆円とほぼ倍増する見込みとなっています。
※出所:電子情報技術産業協会(JEITA)より
まとめ
アメリカIT企業のシスコシステムズは、2020年には500億個のデバイス(モノ)がインターネットに接続すると試算しています。
IoTが浸透することで、私達の生活は大きく変わることとなるでしょう。
また、ビジネスを展開する企業にとっても大きなビジネスチャンスとなることは間違いありません。
もともと日本は製造業「モノづくり」に強みがあります。
世界No1の技術力日本は、世界各地に様々なデータデバイスをネットワーク化できるチャンスでもあります。
今、このあらゆるモノがインターネットに結びついたとき、日本の技術力とインターネットを通じて得た膨大な情報量は日本に蓄積されます。
この膨大なデータが、次なる新しい技術・サービスに生かされてくることは間違いありません。
中小企業も含めた日本企業が、今、その大きなチャンスに遭遇している、そう言えるのかもしれません。
著者:嵐
元東証一部上場企業のベンチャーキャピタリスト。
主に国内アーリーベンチャー企業に対し発掘、支援に従事。
多くのベンチャー企業経営者と面談、新技術や新サービス分野に強み。