組織運営と組織内外に向けた「情報管理」を、「トップ」と情報編集に携わる「組織」から考えてみましょう。
企業であれば、社長と広報宣伝部です。広報宣伝部は組織運営に精通した実務組織として、経営陣の意向に沿って現場の情報編集業務をリードする役割が求められます。
専門店や社会活動でも情報編集担当者は、トップの考える戦略の具現化をサポートする役割を持ちます。
トップの意向を理解し計画を立て実行に移すのは販促部署だけではありません。あらゆる部署において日常業務で情報を扱います。
情報編集力は単にパソコンで「チラシを作る」「Webサイトを制作・運営する」というオペレーションに活かされているわけではありません。
そこで、広い視点で評価・総括するスキルを持つ情報編集リーダーの必要性が浮かび上がってきます。
裏付け情報の効果とは?
最後に企画力の向上など「潜在能力開発」に絞って見ておきましょう。
話を現場に戻すと、DTPデザインを含め販促ツール制作を外注すると、制作費用が発生する代わりに「高度なデザイン」「工程管理の簡略化」「客観性の担保」といったメリットがあります。
一般論で言えば、販促ツール内製化は比較的少部数でリアルタイムに情報を発信する場合に効果を発揮します。
訪問営業チラシはもちろん、TV番組放送後に対応する店内POPや営業用チラシ、WebサイトやSNSによる発信が考えられます。
そこで、限られた範囲内で告知するパーソナルメディアには、商品PR情報ではなく「情報を商品価値の裏付けとして、客観的な判断ができるように誘導する」という視点が求められます。
論理的に情報が組み立てられる信頼性の高いTV番組は「裏付け情報」として重要な役割を果たしているのです。
記事で情報を発信するWebメディアが注目を集めるのは、客観的に情報を発信し、読者が商品価値を膨らませるように心理を誘導するためです。
Webメディアの多くは、初回販売の垣根を低くしたプランへリンクしています。これも情報戦略の1つの手法です。
検索対応を含め、意図するシナリオに基づいてサイト設計や情報編集が行われています。
内製化のメリットを活かすためには、視覚で直感的にイメージする情報だけでなく、論理的に構成された記事や、ロジックに基づいて媒体に反映させる「情報編集力」が重要なのです。
論理的に物事を構成する能力は誰でも潜在的に持っています。
しかし、情報をデザインのように「感性」で捉え良し悪しを評価してしまいがちです。
そこで、曖昧な情報を論理的な形で「見える化」して潜在能力を引き出す取り組みを考える必要性が出てきます。
情報編集力を高めるコツは図解で浮かぶ見えない価値にある
自社での情報編集の結果、「内容がない情報」「見栄えがよくない情報」「誤解を生みやすい情報」になる可能性があります。
この原因は、情報編集の前段階である企画の「コンセプト」「内容の精度」「計画の詰め方」に問題があります。
つまり、論理的思考の深さや組み立てが結果として情報を発信する媒体、さらに結果に影響します。
情報編集力というと、特に営業現場に慣れた人は、営業トークは得意だけど編集作業は苦手、感性がない、時間がない、と及び腰になるかもしれません。
しかし、情報編集力は論理的思考力を基本とするので、常識的な社会人であれば「一定の基本」を知り、「慣れる」ことで克服することができます。
簡単に言えば「図解で解説」して情報を共有する環境を作れば、背景や裏付けのような「見えない価値」を常に探りながら考える習慣が身につくため、問題解決策や企画を考え、他者の意見を聞きながら本質を探ることができるようになります。
成功モデルを企画するヒント
販促効果と能力開発を考えるポイントの1つが、「企画型人材の活用」です。
ネット印刷会社のビジネスモデルは、人件費が大半を占める「DTPデザイン費」「営業費」がほとんどかからないしくみと、数件の受注を一度に印刷するという「印刷機械の効率的運用」を基本に成功しています。
このしくみは、企画型人材によって考え出された成功例ということができます。
もう1つ、ライザップの例を簡単に紹介します。
社長は大学時代からダイエットに関連するデータを独自に蓄積しており、ダイエット用のおからクッキーのネット販売で成功後、ライザップのダイエットモデルを構築したというのが簡単な流れです。
この発想はひらめきだけではなく、データやノウハウ、お客様の声を分析する論理的な情報の蓄積の上に成り立っていることを確認しておきましょう。
考えて実行しながら、情報を評価し論理的に客観的に頭のなかで整理する思考を繰り返すうちに新たな発想が生まれています。
掘り下げた思考を繰り返すことで、たとえば営業活動のモチベーションが生まれます。
営業活動でお客様が「インターホン越しにNOと拒絶した」ら、悪質訪問販売の傾向を見える化したデータを確認し、営業資料としてお客様に訴えることができます。
金銭的な投資がほとんど必要なく人材を育てるためにも、情報編集力は重要な役割を果たします。
情報を整理することから発想を生み出す方法と会議運営の仕方
最後に、企画アイデアを引き出す会議の実践例を紹介します。
運営者は、会議の目的や方向性が共有できるよう会議資料に工夫する必要があります。
講演や講義でも同じですが、レジメとして「項目」を羅列して「空白」にメモを入れてもらう資料では不十分です。
企画会議であれば、「課題」「施策・戦略」「キーワード」、さらに「関連要素(現状・時系列・将来像)」などが複雑に絡み合ってきます。
これらをA4×1枚に図解できれば、解説文と議事進行計画を加えて3ページの資料を会議前に配付することができます。
この資料によって、出席予定者はあらかじめ「企画アイデア」を考えることができます。
論理的な思考とひらめきのヒントとチャンスを提供するだけで、成果は大きく違ってきます。
高い情報編集力を持つ運営リーダーが工夫次第でできる、簡単な実践手法です。
まとめ・・・情報編集の運用責任者とリーダーシップ
情報編集力は、チラシやWebなどの販促情報の編集に限らず、企画会議や経営会議、研修報告、社内報編集などさまざまな場面で求められるビジネスマン必須のスキルです。
論理的に情報を評価しシナリオを作る思考やDTP作業は、しっかりとした思考力と創造力が基本となるため企画力や組織活性化にも反映されます。
情報編集力の向上や活用の基本は、感性で語られがちな情報をまず「見える化」して論理的にイメージすることです。「見える化」するためには、一定のロジックが必要です。
組織内で利用される情報の構成パターンを図解で整理してみると浮かび上がってきます。
情報編集力の向上は、売れない時代に新たな価値を生み出すマーケティング戦略の根本的な課題です。
個々のスキルアップは当然ですが、現場の情報編集のあり方を評価したり、現場で指導したり、組織全体の情報編集を総括できる情報編集の運用責任者がリーダーシップを持って取り組む重要なテーマだとも言えるでしょう。
著者:小林マサヤ
専門はWord・PowerPoint DTPとWebコンテンツ情報の編集。マスメディア広告の「消費喚起」に対し、「自己投資意欲」から「自己決定」へ誘導するコンテンツ&コミュニティマーケティングを提唱。企画力につながるビジネスマンの情報編集力、組織運営力を含むビジネス編集力の強化を提唱している。