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経理業務をリモート化する手法「経理業務がリモート化しにくい理由」

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感染症の拡大や、度重なる自然災害などで、リモートワークが推奨されていますが、「経理部門だけは出社しなくてはいけない!」という話をよく耳にするようになりました。

なぜ、経理部門はリモートワーク化出来ないのでしょうか?今回は、その理由について明らかにしていきたいと思います。

経理部門のリモートワークの現状

近年、度重なる災害や感染症の拡大を経て、リモートワークは徐々に拡大しています。対面でなくては難しい営業活動ですら、少しずつリモートが進んでいる状況ですが、経理業務のリモート(テレワーク)は、どの程度進んでいるのでしょうか?

株式会社マネーフォワードのグループ会社であるMF KESSAI株式会社は、会社役員や経理財務・会計担当者1,000名を対象に、緊急事態宣言後のテレワークの対応状況に関する調査を行いました。(調査期間:2020年4月17日~21日 回答数:1000人)

調査の結果、完全にテレワークに対応できている経理担当者は17%にとどまりました。83%の担当者は決算対応や、請求書の発行や受け取りなどの紙書類の対応が必要な業務によって出社の必要があることが明らかにになりました。

さらに、50%が全くテレワークを実施できておらず、出社を余儀なくされていることがわかりました。

引用「MF KESSAI株式会社 経理財務・会計担当者のテレワークの対応状況」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000420.000008962.html

経理業務がリモートできない一般的な理由

実は経理がリモートできない理由としては、複数の要因があります。

決済処理

会社の活動の源泉はお金です。お金を循環させて利益を生む活動こそが、経営そのものと言えますが、お金を動かすためには「決済」が必要になります。

特に日本の企業では、まだまだ権限移譲がされておらず、稟議を記載した担当者から社長に至るまで、長い経路の決済が必要です。
つまり、多くの「ハンコ」なわけです。

しかも、本物のハンコを必要とする日本の文化では、ハンコをもらうための物理的作業がリモートワークを妨げています。

紙の書類処理

また、日本人は紙の書類を重要視します。特に、多くのお役所では紙の文書による申請や伝達がメインです。

また、取引の後の請求書の発行や請求書の受取りなどは、ほぼ全て紙で行われます。

さらに、過去の帳簿類など、紙のままで保存された資料も膨大に存在するため、取引や業務を円滑にするためには、紙の処理を直ちに止めるわけにはいかないわけです。

経費精算

紙の処理に関連して、どうしても出社を余儀なくされているのが、社員の経費精算に関する業務です。

経費精算では、領収証などの現物証憑の提出を義務付けている会社がほとんどなため、出社して書類を確認する必要があります。

特に、出張精算などの経費精算は、社員に一旦費用を負担させている場合も多く、迅速に処理する必要があります。

セキュリティ問題

経理の取り扱うデータの多くは、会社の経営実態を表す重要なデータです。万が一情報が流出した場合、世の中や取引先からの信頼は一気に失われ、事業の存続にも関わってきます。

しかし、多くの場合、リモートワークは社員の家庭で行われます。その際、VPNという仕組みを使って、自宅のインターネット設備経由で会社のコンピュータシステムに接続し、経理処理をすることになります。

家庭のインターネット環境ですから、ファイアーウォールなどのセキュリティ面も弱く、使用するパソコンも、特殊なセキュリティが設定されていない場合、社員のパソコン経由で、いくらでも情報漏洩が可能になります。経理担当者としては、二の足を踏むのも理解できます。

ネット接続機器の脆弱性

これは経理業務に限ったことではありませんが、従来、家庭のインターネット環境とは、「インターネットに接続出来ればOK」というレベルの機器構成でした。あまり高度な通信能力は求められていませんでした。

しかし、最近は、家族一人一人が携帯電話を持ち、Wi-Fiルータで家族全員接続するようになったため、家庭内での通信量は増加しています。VPNを使用して勤務先の業務システムに接続しても、うまく繋がらず、仕事がはかどらないことも発生しています。

経理業務がリモートできない根本的な理由

経理がリモートできない理由をいろいろと述べてきましたが、実は根本的にリモートできなかった理由があります。実は、法律の問題です。

具体的には、これまで税法上、請求書や領収証などは、紙での保存が義務付けられてきました。理由は、決算処理を正しくし、法人税などの徴税を厳格に行うためです。

それが近年、「e文書法」や「電子帳簿保存法」が施行され、書類の保存要件が、少しずつ緩和され始めましたが、そのことがまだあまり周知・普及されていないことが、根本的な要因であると考えられます。

まとめ

経理業務をリモートワーク化出来ない理由について、色々な角度から分析してみましたが、いかがだったでしょうか?

ハンコや稟議制度、書類文化など、日本企業の伝統的な慣習だけでなく、税法上の理由もあったことをご理解いただけたと思います。

経理業務をリモートワーク化することは、災害時の事業継続計画(BCP)の観点からも、非常に重要なテーマです。

次回からは、具体的な経理業務のリモート化策などについてお伝えしていきたいと思います。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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