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製造業の国内回帰で活かすべき事、東南アジアでの最先端ビジネス展開から学ぶべき事

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製造業の国内回帰で活かすべき事

縮小成熟する国内環境

(1)国内で顧客を探索することは難しい
日本とASEANは真逆の経済段階にあることが、下記図表でわかります。30年に及ぶデフレで日本社会は新しい価値を求めなくなり、これからはそれがさらに悪化する未来が見えます。

逆にASEANはここ20年、新しい価値を求め続け、これからもそれが続きそうです。

(2)日本のスタートアップ環境の悪さ
日本社会が新しい価値を求めなくなって30年、そのニーズが弱体化したためか、新事業創出にとって日本は厳しいビジネス環境になっています。

IMD(国際経営開発研究所)の世界競争力ランキングで日本のスタートアップ環境の悪さを示す分析項目がいくつも見受けられるのです。

製造業の国内回帰で活発化する日本企業の「深化」活動

いち早く高齢化し貿易立国から債権国へ進んだ日本の優位性は『経験』にあります。

この経験を活かすのが日本企業の深化活動です。建設機械のコマツがメンテナンスサービスで価格競争回避をしたのは「モノ」から「コト」へ深化でした。Toyotaは、改善事例を横展開(通称「トヨタの横展」)して生産性を向上させています。

デフレ環境の下で発展したコスト志向とオペレーション重視で蓄積されたナレッジを以下のように活用する深化活動が日本企業は得意です。

ベストプラクティスの「深化」活動
・営業部門の優秀社員やホテルの客室清掃のスキル・ノウハウのマニュアル化

顧客知識の「深化」活動
・コールセンターなど「お客様からの声」をナレッジ化し、商品開発に結びつける

専門知識の「深化」活動
・専門知識をFAQ「よくある質問」の形でデータベース化

知的資本の「深化」活動
・Toyotaの横展(ブラッシュアップした技術を異なる用途市場で練磨し基幹技術に育てる)

製造業の国内回帰でこうした活動がさらに活発になるでしょう。

中堅中小企業が採るべき「深化」手法

(1)ナレッジマネジメント
深化活動が活発であった日本で体系化されたのがナレッジマネジメントです。

ナレッジとは、英語の「knowledge」で、広くスキルやノウハウ等経営資源を意味しています。

属人化されたナレッジを企業全体で共有することで競争力を高めようとするのがナレッジマネジメントです。

ナレッジマネジメントの基礎理論がSECI(セキ)モデルで、
・暗黙知の共同化Socialization
・暗黙知の表出化Externalization
・形式知の連結化Combination
・形式知の内実化Internalization
の頭文字をとっています。

具体的には以下のような体系で、従業員に属人化したスキルやノウハウ、専門知識など暗黙知を企業全体で共有できるよう転換(形式知化)し、効率化、生産性向上、新製品開発に結び付けていく知識創造プロセスです。

(2)ナレッジマネジメント導入方法
ナレッジマネジメントは、SECIモデルだけでは不十分です。企業活動のベクトルを同じくするMVV(Mission・Vision・Value) の共有化とマネジメントがうまく回りだすまでのモチベーション対策が必要です。第3回記事第一章の事例が参考になります。

モチベーション対策とは、公正プロセス(関与・説明・期待内容)でナレッジマネジメントを進めることです。
具体的には以下のような施策と効果が公正なプロセスです。

東南アジアでの最先端ビジネス展開から学ぶべき事

日本企業の組織能力に関する課題

(1)日本企業の東南アジアでのビジネス展開の課題「過去の成功体験」
JETROのレポート「東南アジア発・日本企業の「両利きの経営」分析」によれば、日本の大企業が東南アジアでの新事業創出で苦労している理由として「過去の成功体験」が足かせになっていることが指摘されています。

同じように国際経営開発研究所IMDが毎年発表している世界競争力ランキングでも日本企業の「環境変化対応力」「デジタル化対応力」に課題があることが明白になっています。

下記図のように過去の東南アジアと現在の東南アジアは大きく変化し、求められている企業活動も変わりました。
この変化への対応力に日本企業の課題があるのです。

(2)日本の中小企業の課題「国際化の遅れ」
独立行政法人経済産業研究所のレポート「なぜ、日本企業の生産性は低いのか」で、日本の中小企業の生産性の低さの原因として「日本の中小企業は海外に目を向けず、オペレーション面や効率性に気をとられている。企業文化、リーダーシップのスタイル、言語に関しては、依然としてかなり日本中心である」(下線は筆者加筆)との指摘があります。

つまり、「国際化に遅れていること」が中小企業の生産性の低さの原因の一つなのです。

そして国内での活動も生産性の分母面が重視され、分子である新事業創出など付加価値向上には積極的でないことが課題となっています。

参考:「なぜ、日本企業の生産性は低いのか」独立行政法人経済産業研究所

https://www.rieti.go.jp/users/iwamoto-koichi/serial/086.html

日本企業の東南アジアでの「探索」活動

新事業創出など探索活動が得意でない日本企業が、進化し続ける東南アジアで最先端ビジネスを展開するには、日本本社の企業文化から独立した「出島」方式で現地化する必要があります。

また、日本以上にデジタル化が進行しているASEANでは変化のスピードが速く、MBAによる市場分析は不可能といえます。

従って、失敗を前提とする「アジャイル」開発で新事業を創出していくことが必須といえるでしょう。

さらにアジャイル開発で小さく速く失敗して経験値を積みながら前に進むためには「次々アイデアが生まれる環境」も必要です。

この3点を基軸に、東南アジアで最先端ビジネスを展開する日本企業の共通項を整理すると以下のようになります。

中堅中小企業が採るべき「探索」手法

大企業に比し経営資源の少ない中堅中小企業が東南アジアで「探索」活動するには無料もしくは安価な公的サービスを活用するのがよいでしょう。

現在、中堅中小企業が利用できる安価かつ良質なサービスが2つあります。

経済産業省が推進している「アジアDXプロジェクト」とJETROです。

「アジアDXプロジェクト」でも主にサービスを提供しているのはJETROです。

(1) JETRO
JETROは、独立行政法人として、「国が主体となって実施する必要のない事業のうち、民間では必ずしも採算性のとれない活動、又は1つの主体に行わせることが効率的効果的な活動」をしています。

実際JETROは、利用した多くの企業が「もっと前から利用しておけば良かった」というほど有益な組織です。

ホームページでサービス内容や各種レポートを見るだけでも、外務省や経済産業省、中小企業庁より優れ、その有用性がわかります。

(2)「アジア・デジタルトランスフォーメーション(ADX)」
デジタル化を活用し、新型コロナウィルスへの対応も含めたアジア新興国やアフリカの企業の活力に着目した日本政府は、経済産業省に2019年9月、アジア新産業共創政策室を設置し、「アジア・デジタルトランスフォーメーション(ADX)」を推進し始めました。その構想の概要は以下の通りです。

国内で整う既存事業の「深化」環境、東南アジアで整う新事業「探索」環境を捉えてDXを推し進めようとしているのがADXです。

(3) 利用できるサービス内容
経済産業省が推進している「アジアDXプロジェクト」とJETROサービスパンフレットから中堅中小企業が利用できるサービス内容を体系化すると以下のようになります。

おわりに

少子高齢化が進み市場の魅力が低下する日本は、貿易立国から成熟した債権国への過渡期を迎えています。低所得国から中所得国に仲間入りしたASEANも、高所得国へ移行できるかの過渡期を迎えているのです。成熟した国は「経験」を活かし、成長している国は「まだ見ぬ新しい価値」を求めています。

国内ではナレッジマネジメント、ASEANではアジャイル開発、両者をスムーズにつなげるために国とジェトロの活用が有益です。今回はそのノウハウを紹介しました。

第3回記事では、従業員の意欲を喚起する形でナレッジマネジメントを実践した事例と、コスト目的ではなく新しい価値を求めて東南アジアへ進出した事例を紹介しています。

 

 

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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