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民主主義国家の行方

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こんにちは!栗原誠一郎です。

マハティール92歳にしてマレーシア首相に返り咲き

5月9日、マレーシアにて総選挙が行われ、野党連合が過半数を獲得し、その野党連合の代表であるマハティール氏が10日に首相に就任しました。

この記事を読んで、正直驚きました。

以前、カンボジアについての記事にも書きましたが、現在のアジア各国は、言論弾圧等により野党の力を削ぎ、与党の独裁政権化が進んでいる国が多いからです。

マレーシアでも、政権が今回の総選挙にあたり、フェイクニュースを発信した個人や団体などに禁錮や罰金刑を科す法案を可決させ、政権批判報道の封じ込めに動いたりしていました。

また、マハティール氏が率いる野党が財務関係などの必要書類を提出していないとして30日間の活動停止を命じたり、徹底的な弾圧を行っていました。

しかし、その弾圧を跳ね返し、今回の勝利を獲得したのです。

 

なぜ政権交代が起きえたのか?

マレーシアの経済の状況を見てみると、リーマンショックの後は、実質GDPで平均5%以上の成長を実現していますし、インフレ率自体も2~3%前後で安定しています。

今回の選挙では2015年に消費税導入したことにより国民の生活コストが上がったことが政権に対する不満につながったともいわれていますが、インフレ率は消費税導入後も大きくは変わっていないのです。

そもそも消費税率は6%。生活必需品については非課税ですし、居住用の土地建物、公共交通機関、教育などについても免税扱いで、そのこと自体が政権交代に結びついたとも思えません。

貧富の格差の拡大が原因との声もありますが、確かに貧富の差が拡大している傾向はありますし、ジニ係数の水準も44%(2009年)と高いものの、他の東南アジア国と比べて以上に高いということでもありません。

では、なぜ政権交代が起こりえたのか?

今回の総選挙で敗北した与党連合・国民戦線のナジブ首相は、国策投資会社から自身の個人口座へ約7億ドルが振り込んだ疑惑などのスキャンダルや、カンボジア同様、中国に依存しすぎた経済運営に対して批判が上がっていました。

もともと、マレーシアでは、先住民であるマレー人、イギリス植民地時代に流入してきた華人との対立が続いており(華人によるシンガポールの分離独立もこの流れの中で起きています。)、対立の原因である経済格差を縮小するためにマレーシアがとった施策が、マレー人を経済的に優遇する「ブミプトラ政策」でした。

マレー人が華人に対して経済的に劣っている理由とこの状況を克服するための方法を論じた『マレー・ジレンマ』を1970年に著し、1981年首相就任後この「ブミプトラ政策」を推進してきたのが今回首相に帰り咲いたマハティール氏です。

マレーシアは農村部と都市部で選挙における1票の格差が6倍もあり、マレー人の多い農村部での得票が選挙の趨勢を決定するといっても良いのですが、この農村部では長年「ブミプトラ政策」を推進してきたマハティール氏の人気は非常に高いのです。

マハティール氏が、ナジブ首相とその家族が如何に裕福な生活を送っているかを語り、ナジブ首相が中国に依存した政策を行っているかということを訴え、本来、与党の基盤である農村部で政権への反対票を獲得できたことが今回の政権交代の要因ではないかと思います。

そういう意味では、今回の政権交代は、民主主義の力というよりは、マハティール氏の政治力により成しえたことと言えるかもしれません。

 

マハティールの真価と民主主義国家のあり方

そもそも、現在の与党優位の法律を整備し、独裁化を進めてきたのは、マハティール氏です。マハティール氏は92歳という年齢もあり、数カ月以内に野党連合の実力者アンワル・イブラヒム元副首相(70)に政権を託す意向とのことですが、このアンワル氏もマハティール氏が過去同性愛の罪で投獄し政界から一度は追い落とした相手です。

したがって、政権を託すという話も野党連合をつくるためだけのことかもしれません。

いずれにしろ、この1年位の間に、マハティール氏がどのような政権運営を行うのか?
ある意味、今後のアジア諸国、そして民主主義国家のあり方が問われると思います。

さて、皆さんはどう思いますか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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